6 さよならの向こう側※

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(なんで──電話では調子が良いって言っていたのに) 本当は症状は悪かったけど俺に心配させない様に誤魔化したのだろうか。彼がどんな思いで毎回明るい様子で電話に出ていたのか、想像するだけで涙が出そうになる。 (......信じて待つって決めたんだ。祐樹は必ず帰って来る。.......早く、帰って来て、祐樹) 君がいない人生なんて考えられないよ。 押し潰されそうになる心をギリギリで何とか持ち堪えて講義室に戻る。今は彼を信じて待つ時だ。そして、祐樹が帰って来た時に「おかえり、頑張ったね」って抱き締めるんだ。 ──── ── (──此処は...) 目を覚ますと、そこは真っ暗な世界だった。キョロキョロと辺りを見渡し目線を下ろすと寝巻き姿の僕がいた。そこでようやく状況を把握する。そうか...体調が悪くなってきて、そのまま倒れたんだ。今迄なんとも無かったのに手術前にこの有様だ。ある意味タイミングが良かったのかもしれない。 ──倒れた後の事は全く覚えていない。此処は死後の世界....いや、生と死の間を彷徨う空間か。 (真っ暗....意識はある筈なのに、身体が鉛の様に重たい。....) 死ぬのかな、僕。 ふと、そんな考えが過り、胸の中に小さな恐怖の感情が生まれる。絶対に生きて帰るって約束したのに、やっぱり駄目なのだろうか。何もかも上手くいき過ぎて夢を見てしまったのが悪かったのだろうか。
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