1 僕と彼の関係

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「昼ご飯作るけど、うどんでもいい?冷凍のやつがまだ残っていて。何か食べたいのがあるなら作るけど」 「....うどんで」 「分かった」 すぐ作るから待っててと続けた彼は、此方に背を向けてキッチンに向かう。昼ご飯の準備に取り掛かろうとしている彼は井口晴也──僕の番である。 番が成立してから二年程経ち、大学生になった僕達は、進学する事になった大学が近く、大学から一駅離れた場所にあるマンションに二人で同棲...いや、同居をする事になった。僕の為に僕の側で生きる──あの時放った言葉通り、あの日からずっと晴也は僕の側にいる。 発情中のΩを襲い、無理矢理番にしたという事実は、イケメンで優等生という彼のイメージを一変させ、卒業迄、彼はずっと一人だった。彼は責任を感じているのか、僕以外の誰とも会話を交わそうとしなかった。後に彼から聞いた話によると、親とも大学進学をタイミングに絶縁を言い渡されたらしい。 (にしても、だからといってずーっと僕の為に動かなくてもいいのに) ソファの方に寝転んだまま、キッチンで黙々と作業をする彼の姿を眺める。 自分はハッキリ言って、あれは事故だったと受け入れている為気にしていない。なんならメリットもあった。番になった事で不定期に訪れていたヒートが外にいる時に来る事がなくなり、心配が減った。その代わり彼のみに対して発情する事は増えたのだが...実は驚く事にから一回も行為をしていない。発情したら前戯をして達させてから終了。それ以上に手を出してくる事がない。
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