第8話 女子会1

1/1
前へ
/41ページ
次へ

第8話 女子会1

 美穂はストリーミングで、AVをずっと見ていたが、途中で吐き気を催し、トイレで吐いてしまった。  わざわざ有料プランを購入する必要もなかった。無料動画で吐き気を催すには十分だったからだ。  見ている内に、中学で受けた性被害のことを思い出したのだ。  呼吸が荒く、冷や汗が出てくる。涙まで出て来た。  かろうじて水を飲んで、自室に戻り、ノートパソコンを消すと、美穂は床に力なく座った。  真示と一緒に旅行へ行く一昨日に、美穂は大学が休みに入ったこともあって、友人達と女子会に参加していたのだ。その事がまざまざと思い出された。  女子会には他に、美穂の友人の、亜美(あみ)香織(かおり)紗耶香(さやか)が参加していた。  文学部で、文芸部のメンバーの中で、特に仲の良い3人だった。  お互いに気を置かないような友人達で、美穂はこの3人のことは大好きだった。  互いに小説を投稿したり、同人誌を作ったり、美穂にとっては親友と言える友人達である。  場所は焼き肉店で、薬の飲み合わせもあってお酒を飲まない美穂は例外として、亜美達3人や、カクテルやビールなども飲んで良い感じに酔っていたのもあったと思う。  話題が美穂のことに移った。 「ところで美穂は法学部の彼氏、真示君だっけ? 最近どうなのよ」この中では比較的リーダー的で皆を引っ張っていく亜美が尋ねた。  亜美は美人で、付き合っている彼もおり、その彼は経済学部で、ベンチャー企業で年々業績を上げているゲーム会社の御曹司である。とは言え亜美はそれを鼻にかけてはなかった。  亜美は皆のまとめ役として気を配り、同人誌などの締め切りの管理や、イベントの幹事や、もりあげ役を進んでやっているリーダー気質の持ち主である。そして皆から慕われていた。  美穂は明後日、真示と一泊二日の温泉旅行に行く事を、そこで話した。ここにいる友人達は美穂も信頼していたし、きっと喜んでくれると思っていたからだ。   「へえ! 楽しんでくると良いよ」と3人は予想通りに喜んでくれた。 「みんな、ありがとう。……いや実はこのメンバーだから言うんだけどさ」 「どうしたのよ?」 「私、処女なんだよね。だから上手く出来るのか心配で」 「そうなんだ……。まあ相手に任せれば良いんじゃない?」 「いやその……相手も経験が無くて」 「あらそうなんだ。外見はそう見えないけど、真示君だっけ。意外に身持ちの固い男なんだねえ。可愛いじゃない。まあ一度か二度失敗しても、良いんじゃない?」 「そういうものなのかな」 「そうだよ……ゆっくりやれば良いんだよ。はあ……初々しいな。あーあ」  そう言って、亜美はカクテルを飲むと、ため息をついた。  その表情は、美穂の事を応援してくれた様子と打って変わって、悲し気なものだった。  美穂は何か自分がまずい事を言ってしまったかと思い、気になって仕方が無かった。 「亜美ごめん。私何かまずいことを言ったかな?」 「違う。美穂のせいじゃないんだよ。私の彼のこと知ってるでしょ?」 「うん。確か……経済学部で成績優秀な人だよね。剣道もやっていて恰好良い人で」 「まあ外面は良いよね。ルックスもステータスもね。皆もがうらやむとは思うよ。でもさ、最近困ってんだよね」 「困っているって……」 「私ももちろん好きだから付き合っているんだけどさあ。美穂の話を聞いて思い出しちゃったんだけど……。あー、皆ごめん。ここで彼氏の悪口を言って良いでしょうか!?」    その場にいた香織(かおり)紗耶香(さやか)も色々とため込んでいることがあるらしく、大賛成となった。 「これから初々しい体験をする美穂の前で言うのは何なんだけど。私の彼ってセックスが最悪なのよ」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加