第9話 女子会2

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第9話 女子会2

「……最悪……って?」 「ああいうのを不必要な真面目って言うのかね。真面目にAVを見て勉強しているらしくてさ。●●という作品を見て俺はコツを掴んだとか言って、その男優のプレイを私に対してやる訳よ。それが全然気持ち良くないのよね。しかも痛いし……それで私が不満を言うと、『〇〇という女優は感じていた。感じないお前がおかしい』って言ってくるんだよ」 「……そんな、AVはあくまで演技なのに……」 「でしょ? でも真に受けちゃっているみたいでさあ。あげくに『お前は喘ぎ声が小さい。もっと俺を興奮させるように喘げ』って言って来るんだよね」 「……喘ぐも何も、それは女の子の自由だと思うけど……」 「まあ、セックス以外では優しいし御曹司だからね。私も打算あるから、まだ別れるかどうかの判断がつかないんだけどね」  「……」   「ちょっと私も言っていいですか?」  香織が発言した。もちろん誰も止めずに真剣に聞き耳を立てる。  香織は体型的には、少しぽっちゃりとした感じではある。しかしだからと言って不健康な訳ではなく、顔立ちなどを見ても魅力的な女子である。本人の癖なのだが、常に丁寧語で話す。 「あのね。亜美の話を聞いて、私も普段からため込んでいる不満を話したくなったんです。私の彼って、セックスの最中に、かならず中折れするんです。それで……そんな時にどうすると思います? 美穂?」  なんで私に聞いてくるんだろうと思いつつ、美穂は何とか答える。 「えっと、その中折れって何なの?」 「あ、そうか。説明不足でごめんなさい。要するに勃起状態を維持が出来なくなるんです。セックスの最中に。まだ20代なのにね。それでその彼、一体どうやって回復すると思います?」 「えっと……何か精力剤とか、何とかドリンクとかかな?」 「それだったらまだ良いんです。そこで彼がやる方法って、そこでスマホでエロ漫画を見て、自分のお気に入りのシーンを読むんです。それで興奮して、勃起状態に回復するんですよ!」 「……なにそれ……」美穂としては絶句だった。 「もちろん私は体型だって太っているから、決して色気のある体型じゃないのは分かってます。それに漫画の様な色っぽいような顔とか、激しく感じているような声なんか出せないです。でも、でも……それなら私とセックスしないで、漫画読んで、自分で自慰していればいいじゃないですか。私って何のためにセックスの相手しているんですか」  香織は言いながら、泣き出した。  亜美はおしぼりを香織に差し出し、涙をぬぐえるように気遣った。     「私も……言って良い?」紗耶香が発言した。誰も止めずむしろ吐き出して欲しい雰囲気だった。  紗耶香は身長はやや低く、どちらかと言うと美しいというより、年下に見られがちのような可愛い外見の女子だった。声も少し高い。 「私も……セックスはしていたんだけど、ある日出来なくなって」 「……出来なくなったって、どうして?」 「彼氏がAVのストリーミングの中毒になって」 「……今はスマホでも簡単に見られるからなのかな……」 「そう。凄いよね。暇さえあればずっとそれを見ている様で、それでじゃあ私と付き合う意味があるのかって怒ったのよ」 「……そうしたら?」 「その時は反省して、ちゃんとセックスをしようとなったの。でもさあ、そこで問題が発生したのよ」 「……問題?」 「勃起出来ないの。何をしても。香織ちゃんと似ているけどさ。私の裸を見ても全然勃起しないの」 「……それってまさか……」 「そう。それで試しに彼がいつも見ているストリーミングのAVをその場で見せた。そうしたら勃起出来たんだよね。彼が言うには『これでセックス出来るから、このスマホ見ながらやろう』って言われたから、その場でキレて帰って来た。それ以来口もきいていない。確かに私はAV女優の様に綺麗じゃないし、体型だってあんなに魅力的じゃない。だからって……ふざけんな……」  言いながら紗耶香も泣いてしまった。  亜美と香織は一生懸命に慰めた。そのまま彼氏の悪口大会となり、女子会としては盛り上がったのは不幸中の幸いだった。  聞きながら、美穂は暗鬱な気分に落ち込んでいった。  真示は、どうやってセックスの仕方を学んでいるんだろうか。  真面目な彼のことだ。もし真面目にAVから学んでいれば、それを実践しようとするだろう。  しかし他に学ぶところなどあるのだろうか?  なんだかんだ言っても、現代日本で一番初めにセックスの情報にアクセスしやすいのがスマホであり、そこから容易にAVに触れる事が出来る。  真示だって、AVを見た事ぐらいあるだろう。  亜美、香織、紗耶香の話してくれた事は、美穂と真示の未来像なのだろうか。  真示はそうならないと思いたい。でもそれなら他にセックスの仕方とかちゃんと学べる場所や、教えてくれる人が存在するのだろうか。  考えれば考えるほど、美穂は暗鬱となり、そして恐怖しながら旅行当日を迎えることになったのだった。
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