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LAST.高級コーヒーおかわり不要♡
ーーーー…
ーーー1時間後。
「先輩。シャワーありがとうございました」
「……うん」
タオルで髪の毛を拭きながらリビングへ戻ってきた榎本は、サッパリした顔つき。
対馬はその姿をちら、と見てすぐにふいっと目を逸らす。
自分と同じシャンプー類を使っているはずなのになぜかまったく違う香りが漂っているような気がして、動揺してしまったからだった。
「…照れないでよ先輩。
さっきまでのイケイケなスケベ先輩はどこいったんすか?」
「う、うるさいっ!そういうこと言うな‼︎」
ふふとニヤけながら近づく。人差し指で肩をチョンチョンとつつくと、対馬はまた茹蛸のように顔を真っ赤にして「ヤメロ!」と手を振り回す。
まるでしつこい蚊を追い払う猫のようだ。
「はいはい、すみません。相変わらず意地っ張りの怒りんぼうですね。でも、そんなところも……。
めちゃくちゃ。…大好きですよ、先輩」
肩を掴んで、頬にチュと口づける。
「~~~~っ!!」
赤面、直後に激しく動揺。
なんだかヘタレだと思っていた後輩のこいつの方が、もしかすると自分よりも何枚も何枚も上手なのでは……?と、
ある疑問が頭に浮かぶ。
そう思いつつも。
自分の不埒な企みによる、破茶滅茶な榎本との初エッチ(計4回の暴発。)から無事生還できたことを思えばなんて事はない。
(そう、さっきのあれは…まやかし。悪い夢。
薬の効果が切れた今の俺は何にも縛られる事なく自由だ。
ーーースケベでも性欲魔人でもなんとでも呼ぶがいい、まあ俺だって鬼じゃない。少しは悪かったと思ってるから……
調子に乗るのも今日だけは許してやるさ、榎本よ。)
フッ…と偉そうに鼻で笑って、榎本から離れるとキッチンへ向かう。
「………マカロン食べよう。
コーヒー淹れ直してやるよ」
「???ああ……ハイ。ありがとう、先輩」
グラム900円のコーヒーを再度ドリッパーにセットする対馬。
流石に贅沢すぎておかわり分しか購入できなかったため、次は心して飲みたい。
「先輩、このコーヒー本当美味しかったっすよ。結構いいやつなんじゃないですか?」
リビングのローテーブルの前、情事前と同じ場所に座り込んだ榎本が対馬へ問いかける。
「ん?んーーまあな…。」
敢えてそこは言わない。言ったらそこからボロが出ていろんなことがバレてしまうかもしれない。油断は禁物だ。
もうこの今回の自分の怪しい企みは、このまま闇の中へ葬ってやるんだ。絶対に、墓場まで持っていってみせる。
「ーーあ、さっき淹れてくれたやつ…先輩のカップめちゃくちゃ余ってるじゃないですか。
勿体無いから俺、これ飲んでいいすか?」
「ん?あーー。…………あ?」
人の飲みさしなんかやめとけよ、そう言おうとしてふと、瞬きをする。
(おい………ちょっと待て……
さっき淹れたやつ………?俺の………?
それって………
ーーーーーやばい!!!)
「ああああぁあ榎本ちょっと待てだめだそれは」
ーーーグビ…
「‼︎‼︎」
後輩榎本の獣モードが、遂に始動する。
【END】
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