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後日談➖ツンデレ、冷や汗をかく➖
「よぉ、お待たせ対馬」
「ーーーー…うん。」
獣コーヒーの一件から三日後の週末の夜。
いつもの暗がりのバーで対馬と、友人喜田は落ち合った。
ーーーガタタッと椅子を引き腰掛ける喜田。
既に着席済みの対馬は、どことなく気怠そうで、片腕を後ろに回しやたらと自分の腰部分を気にしている。
「ん?なんだか元気ないなぁ対馬。
あれっ……まさか。
ーーーあのクスリ、ダメだったか?」
「へへぇ⁉︎」
何とも鋭い喜田。
クスリという三文字に対馬はビクゥッと反応し身体を震わせた。
そしてその小さな動きですらまるで大きな針で刺されたかの如く激しい痛みを発するのは……そう、三日前大ダメージを受けてしまった大事な下半身である。
瞬時に対馬は「ふうううう……」と情けない声を出しながら腰から下……臀部にかけてを右手で庇うようナデナデとさする。
「ダメというか、な、なんというか」
「なんだ。その様子だと……随分仲良くなったんじゃないか?野獣のような後輩君が見られたんなら良かったな」
(言えないーーー…あのやばすぎる媚薬をいくら手違いといえどまずは先走るかの如く俺が口にしてしまい、そして……あとを追いかけるように榎本までも)
対馬の脳裏に、三日前に起こった恐怖の惨劇が蘇る。
結局あのときーーー…
自分が飲み残したカップに並々と入った獣コーヒーを飲み干した榎本と、朝までノンストップで行われたまるで発情期のケモノ交尾同然の交わり。
ーーー果たして何度達しただろうか?
……記憶にあるはずもない。
(あれほど、命の危機を感じたのは二十五年間生きてきて初めてだ………。
なんなら何度か三途の川に足突っ込んでたような気だってする)
媚薬入りコーヒーの効能作用のスピード、効力、そして凄まじさというとそれはもう目を見張るほど、いや見張る余裕などないかの如く。
口にした直後目の色を変えた榎本の手によりベッドへ逆戻り。
そこからの記憶は無くーーー…我を失った榎本に激しく求められまるで失神するように絶頂を迎えたかと思えば再度求められ、また失神するかのように……そのエンドレス、まさに、獣モード。
精力だけにとどまらず身体の中身すべて搾り取られたのではないかといわんばかりに。
事後、まともに身体を動かせるようになるまで一体何時間かかったか。
(もう…あの時の榎本は、人ではなかった。
獣、肉食獣、いや、ちがう。
悪魔………そうだ、
ーーー魔人だ。
あの時の彼奴はまさに……エロに頭の中を侵されてしまった……そうだエロ魔人だ)
「…………」
少しでもかの情景を思い出そうとしただけで身体中が震え上がり、大ダメージを負ってしまった下半身がまた悲鳴を上げているような気がしてくる。
対馬はあらゆる場所が縮こまりそうになるのを堪えながら、目の前のジン・トニックをグイッと口に流し込んだ。
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