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「戻りましたぁ~~」
「‼︎」
背後からこの怒りの元凶が帰ってきた雰囲気を感じ取る。
すっ…と静かに椅子から立ち上がり振り返る対馬。
「あ、先輩!いま戻りまし」
「榎本ぉ!お前、いったい今までどこで油売ってたんだぁ⁉︎おいこら‼︎毎回言ってんだろ⁉︎なんでボードに帰社時間を書かない⁉︎時間配分の予測くらい出来んだろーが‼︎」
営業担当の榎本は、まるで般若のような顔で怒鳴り散らす先輩・対馬に圧倒され言葉を失う。
「す、すみません。いやだって、今日アポ取ってたスイーツ専門店、社長さんの話が長くて。」
「うっさいバカ!言い訳すんな!」
周りの同僚は“また始まったよ、こいつら…”と見て見ぬふり。
「いや、ボードに書かなかったのは、それは俺が悪いですけど…けど、俺一応14時頃までには戻りますって伝えましたよ?
ほら、まだ14時まであと5分……」
「だから言い訳はいいって言ってんだよ!
どーせまたお茶菓子でも出してもらって先方の綺麗なお姉さん社員たちと楽しくワイワイ話してたんだろーが!ちっ、鼻の下伸ばしやがって…」
カチンとした顔の榎本。
「……じゃあ本当のこと言いますよ。
先輩のめちゃくちゃ好きなあの個数限定販売マカロン。
特別に予約させてくれるって言うから社長さんの無駄話に付き合ってたんじゃないですか!」
「えっ」
「この前の初デートの時、先輩言ってましたよね?
スイーツ店の前で“俺あのマカロンめちゃくちゃ好きなんだよなぁ~人気すぎて全然買えなくて悲しい”って…。
先輩のために頑張ってきたのに!そんな言い草ないですよ!」
「わああああぁ‼︎
ばっ、ば、バカ‼︎おまえっな、なななに言っ…」
赤面する対馬。
「大体ねぇ先輩、俺がいつ綺麗なお姉さんとお茶菓子食べて楽しく話してきたっていうんですか⁉︎
俺が楽しくスイーツ食べてんのも会話してんのも鼻の下伸ばしてんのもぜーーーんぶ先輩じゃないですか!言いがかりはやめてくださいよ!」
「あああぁあ‼︎うわぁぁ‼︎も、もういい!
もういいから戻れ‼︎」
(初デート…)
(付き合ってるんだ…)
(スイーツデートしたのかな)
(対馬君、ツンデレすぎ…)
同僚の心の声がオフィス内に響き渡った。
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