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「そんなわけないだろう。あんなモノ使わなくたってその気になりゃあ俺のイチモツは意識する事なく秒でバッキバキだよ。
ーーなんなら今夜試してみるか?」
「ふざけろ。今度こそお前の彼氏にチクってやる」
“ジョークだよ”と喜田は笑う。
「ああ、そうそう。
そういえば……後輩君のその後の体調はどうだ?」
「は?その後?
ーーーどういう意味だよ……?」
問いかけの意味がよくわからず怪訝な表情の対馬に、“言ってなかったか?”とスマホを取り出し写真アプリを開く。
「その後って言ったらそのまんま、その後だよ。
あのクスリな、副作用があるらしくて……
なんでも出る人と出ない人とマチマチではあるらしいんだが」
「へぇ〜副作用……。ーー……へえぇぇっ⁉︎⁉︎」
目玉が飛び出るのではないかというほどの勢いで驚く対馬を横に、喜田は“えーっと、あった。これこれ”と言いながらある画像をタップして、指2本でピンチアウト。
小さな文字の羅列が拡大される。
「あ、これ説明書な。効能作用やら注意事項やら色々書いてるみたいで現地で写真撮らせてもらったんだよ。
希望者には渡してるらしい」
「いやいやいや希望してなくても渡せよダメだろ普通に考えて……っておい!副作用ってなんなんだよ、ちょっと見せろよそれ!」
冷や汗をかきながら慌てた様子で対馬は喜田の手元のスマホを覗き込む。画像の説明書らしき用紙の文字はなんとすべてが中国語で書かれていた。
まさに現地感半端ない。
“読めるわけねぇだろ……”と絶望する対馬。
「……あっそうだ翻訳アプリっ……‼︎」
「…えーとなになに、该药的注意事项功效…
『このクスリの、注意事項、副作用について……』」
「なっ、喜田おまえ中国語読めるのかよ」
「ん?まあな。そりゃ仕事だからな。
えーと……三天或者五……
『服用後3日〜5日後稀に次の副作用が出ることがあります。
胸の動悸、発熱、悪心、またそれに伴いーーー』
「…………」
喜田は続けて中国語で書かれた説明書を解読しながら読み進める。
『それに伴い、服用時と同様の効能・作用。
ほうほう。
えーーと…なになに。
気分の高揚、興奮、暴力衝動、
……陰茎の硬直、等。
ーーーだとよ。
遅れてくるボーナスタイムってことだな」
「なん…だと………」
ーーラインッ♪
「‼︎‼︎」
対馬のスラックスのポケットに入れられたスマホから、メッセージアプリのポップな通知音が鳴り響いた。
対馬は「ひい」と声を上げる。
「人によるみたいだけどな。
まあ出たら出たで……ラッキーってことでいいんじゃないか」
「…………」
(てめえ、喜田………何を呑気なことを……
こんな大型爆弾最後の最後に落としやがって3日〜5日後に服用時と同様の効果……だと?
まさに今日がそのXデーじゃねえか!しかもその副作用は出たとしたら明後日まで続くということか?それとも出るか出ないかまるで恐怖のクジ引き結果待ちをするかの如く明後日までただ震え怯えて待っていろということか?
今頃になってこんなこと知ってしまって俺にどうしろと)
ーーーラインッ♪
「クソッうるせぇな誰だこんな時にっ!」
対馬はわなわなと震えながらもスマホを取り出し苛つく指先でびしぃ‼︎と画面をタップする。
lineアプリが開かれた。
「ーーー‼︎‼︎」
差出人の名を見るまでもなくーー…
そのメッセージ内容に対馬は度肝を抜かれる。
『先輩いま何してますか?先輩』
『先輩ちょっと今めちゃくちゃ先輩に会いたいんですけど今から会えますかね先輩 とりあえず先輩のマンション行きますね5分くらいで着くと思いますんで先輩待っててくださいね先輩』
「ひいい……ど、どうしよう」
(なんだこの脈絡のない文面は…理性失ってる感じがひしひし伝わるんだが……ま、まさか…榎本……お前………嘘だろ。まさか……もう一度?
やばい。ーーーこ、こここ殺される)
「ん?どうした、対馬」
「や、ややややばいやばいやばい。
悪い喜田急用を思い出した、俺もう逃げ、じゃなくて帰……」
ぶるぶる震える手でガタタッと椅子を引き振り向こうとしたその時。
ーーラインッ♪
『先輩マンションいなかったんでいまいつも居るバーに向かってますよ先輩もうすぐ着きますんで先輩ああ早く会いたいよ先輩会いたいあいたいあいたいヤリたい先輩』
「あわわわわわわ」
ーーーラインッ♪
対馬の全身に滲む冷や汗と共に、いま、榎本の獣モードが再始動しようとしていたーーー…。
END♡
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