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4.獣(ケモノ)モードはどっち⁉︎
飲み込んで胃の中へと流れ込んだ瞬間。
急激な悪心に襲われ、思わず咳き込む。
「げほ、げえっほ!ごほ!っ!」
「……せ、先輩⁉︎ど、っどうしたんですか⁉︎」
「げほ!ごほっ……ぅっ……」
(ーーーマズイ。当たりだ。)
胸を押さえて苦しそうに咳き込み続ける対馬。
榎本はその姿に驚き慌てふためく。
「先輩⁉︎大丈夫ですか⁉︎」
「うっ、やば……ちょっ…。無理…
ぎもぢわるい……ぅっ、吐く」
そう呟いて、すぐさまトイレへと駆け込む。
「おぇっげほ、げほ、っ」
榎本もすぐにあとをついて、トイレの中。対馬の背中を心配そうにさする。
「はあ、…はあ…、はあ…」
何度か嘔吐し悪心がマシになってきたような気がする瞬間、突然我に返ったように冷静になり、たとえようのない想いと、涙が込み上げてくる。
「せ、先輩……大丈夫…?
あの、食あたりとか……?まだ吐く?」
心配そうに見つめながら自分の背中をさすっている榎本の優しさに、罪悪感と哀しさで胸が苦しくなり、ただ、首を横に振る対馬。
「…………っ……」
すぐ隣、こんなにも榎本に近づいたのは、体を密着させたのは、いや、触れられたのは。
すべての初めてがまさかトイレの中で行われ……しかも、嘔吐する自分の情けない姿。
もはやプライドはズタズタだった。
そして同時に猛省する。
(よこしまな考えに、
バチが当たった………。)
「…………っ……グスッ」
「⁉︎せ、先輩⁉︎な、なに泣いて…
苦しいんですか?どこか痛い⁉︎」
「ち、がう……っ。ひっく、
な、んでもねーよ、バカ。見んなっ…。」
「………」
唇の端についた胃液と、瞳からとめどなく溢れる滝のような涙をTシャツの袖でごしっと拭う。
トイレの床に座り込んだまま。
ひくっ、と嗚咽の混じる息を吸い顔を上げた瞬間だった。
肩をぐいと掴まれ、突然の衝撃に対馬は「はっ」と声を漏らす。
ーーーチュッ…
榎本に口付けられていた。
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