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「………え、?…えの、……もと、、?」
「ああ……しちゃった。
先輩。先輩が悪いんですよ…そんな……弱々しい姿で…ぼろぼろ泣いて………」
「………えっ…いや………、え、はっ?」
状況が飲み込めない。
(ここどこだと思ってんだ?トイレだぞ。俺がゲロったばっかの便器の前だぞ?てか普通、嘔吐した直後の人間の口に、キス…するか?
なんだこいつ……頭おかしいんじゃ……)
そう思いつつも。
耳まで真っ赤に染まってしまう、熱を発する首から上の自分。
「あのさ、先輩。明日、なんの日か知ってます?」
「えっ…明日…?
ーーー…さ、3、ヶ月……の。」
「えっすごい、正解。覚えててくれたんだ…。
ーーそう、俺が先輩に告って、付き合うのokしてくれてから、3か月。」
「…………」
「キスとか、さわったりとか…そういうの全部ひっくるめて。
ーーー明日、しようと思ってたのに。
夜景の見えるレストランと、……ホテルのスイートルーム。実は予約してたんすよ?」
「う、そ…」
「嘘なわけあるか。
本当はさ、毎日毎日めちゃくちゃ触れたくて、キスしたくて、抱きしめたくて…たまらなかった。どんだけ俺が我慢してたか知らないんでしょ?
……先輩、真面目だし照れ屋だし、怒りんぼうだから…適当なことしたら駄目かなって。体目当てみたいに思われても困るし。
ちゃんと期間経て我慢して。俺の気持ち…真面目に誠実に、先輩のこと本気で好きなんだってことわかって欲しかったから……。」
「なんだよ、……っく…っそれ、……」
なんとか止めようとするのに涙腺がぶち壊れてしまったかのように涙がボロボロと溢れてくる。
「おれ、てっきり…お前がっ……えの、もとが…っ俺に欲情しないんだと……っ
キスとかさわるのとか、嫌なんだって、ひっく、思って…っふっ……んだよっ…ばかやろ…っ」
「先輩…何言ってんすか。んなわけないだろ…」
榎本は、対馬の頬に手を当てる。濡れた睫毛を見つめて、すりすりと撫でる。
ーー愛しい、大好き、触れたい、口付けたい。そう伝わってくる。
「なんだ、先輩……そんなことで悩んでたんですか。もしかして俺にいつも冷たかったのも、そのせい?」
「…し、知らない…別に冷たく無いし、普通だし」
さらに赤らんだ顔で目を逸らす対馬。
その恥らいに染まる顰めっ面を見つめて、フゥ、と息を吐く。ーーー可愛いなぁ、先輩。
二人ともの胸の中をただひたすらときめきが走り続ける。……ここがトイレなことも忘れて。
「今日。先輩の方から部屋に誘ってくれるなんて、思いもしませんでしたよ。
流石に我慢できるか自信なかった…やっぱり出来なかった。
てか、ーーーもう、いいですよね?」
「えっ……」
もう一度肩をぐいと掴む。
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