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A-4、15年前 横浜
田中大輝は、高校2年だった。妹のエリカは中学2年。父は弁護士で渋谷に事務所を持っている。母は、日本人と白人のハーフでとても綺麗な女性だった。生まれた時から、何一つ不自由なく大輝とエリカは育てられた。
母は倫理感が強く、とても厳しかった。地域のボランティアで良く出かけていた。
大輝とエリカは仲がいい兄妹だった。
その分喧嘩もした。
最初、子供たちは,父と母の仲が微妙に嚙み合わなくなっていったことに気が付かなかった。
子供たちの知らないところで父は浮気をし、母にバレて母と父は家庭内別居をしていた。
母は、子供たちには「お父さんの鼾が煩くて」と言いながら、父と寝室を別にしていた。
母の態度は頑なで、父は、最後には母に「遊びだった。もうしない。許してくれ」と大輝とエリカの目の前で土下座した。
その時、子供たちは父の浮気を知った。大輝も妹も父を軽蔑したが、母は、そのうち父を許すだろうと思っていた。
「お兄ちゃん、お父さんが浮気するなんてビックリだね」とエリカが大輝の部屋に入ってきて大きな目を更に大きくして言った。
「魔が差すってヤツだろう?クソ真面目だけがウリだったのにさ。意外だな。オヤジも男だったって事かな」
「これから、どうなるのかなぁ?」
エリかは不安そうだった。大輝は、未だ中学生の妹が不安にならないように、さも『大したことではない』といった雰囲気を自分は貫いた。
「お母さんは、意地っ張りだから許すまで時間がかかると思うよ。でも、大丈夫だよ」
大輝はそう信じていた。両親は父が浮気をするまでは、すっと仲が良かったからだ。
普通の夫婦より仲が良かった。母方の祖父はオーストラリアの人で、愛情の表現が日本人とは違う。母もその影響を受けていて、日常的に子供が居ようが、両親は自然にキスやハグをしていた。子供たちは、そんな両親が少し恥ずかしくて、何となく誇らしかった。
自分たちは、本物の愛情で結ばれたカップルの間の兄妹だと信じていた。
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