2人が本棚に入れています
本棚に追加
父は、きちんと女と別れたと言ったのに、それから一カ月も経たないうちに、相手の女の嫌がらせが始まった。その女を大輝も見た。
なんであんな女と・・・と思ってしまうくらい太って醜い女だった。母より勝っている所は「若い」だけだった。
女は、録音した父との睦言の声を留守番電話に入れたり、家の前まで来て怒鳴ったりした。
「愛も無いのに何で別れないの?」
その女を何度か警察に持って帰ってもらった。
勿論、警察の手も借りた。何度も警察へ相談のため母は出向いた。
女は、父の事務所の方には手出しをしなかった。もっぱら、自宅に攻撃を仕掛けて来た。
「あの人を愛しているの」と家の前で号泣しながら、何時も喚いていた。
「本物の愛が、あんたたちへの責任で壊されているのよ。私たちの純粋な愛が、あんた達家族に殺されているの!分かっているの⁈」
小さくて太った醜い女が、本気で泣きながら喚く。
長く開いて一週間、短ければ3日に一回。そのくらいの頻度だった。
太った醜い女は、必ず父が居ない時間を狙って大輝の家の前に来ては「真実の愛」と言う言葉を大声で何度も繰り返した。
その姿は、近所の人たちの派手な見世物になっていた。
母は、気丈にふるまっていた。逆に大輝とエリカの前で詫びていた。
「ごめんね。私がお父さんと別れないから、あなた達を嫌な目に合わせて・・・」
何年たっても忘れられないあの日。
大輝が、部活で帰りが遅くなったその夜。
最初のコメントを投稿しよう!