A-4、15年前 横浜

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 父は、きちんと女と別れたと言ったのに、それから一カ月も経たないうちに、相手の女の嫌がらせが始まった。その女を大輝も見た。 なんであんな女と・・・と思ってしまうくらい太って醜い女だった。母より勝っている所は「若い」だけだった。  女は、録音した父との睦言の声を留守番電話に入れたり、家の前まで来て怒鳴ったりした。 「愛も無いのに何で別れないの?」 その女を何度か警察に持って帰ってもらった。 勿論、警察の手も借りた。何度も警察へ相談のため母は出向いた。  女は、父の事務所の方には手出しをしなかった。もっぱら、自宅に攻撃を仕掛けて来た。 「あの人を愛しているの」と家の前で号泣しながら、何時も喚いていた。 「本物の愛が、あんたたちへの責任で壊されているのよ。私たちの純粋な愛が、あんた達家族に殺されているの!分かっているの⁈」  小さくて太った醜い女が、本気で泣きながら喚く。 長く開いて一週間、短ければ3日に一回。そのくらいの頻度だった。  太った醜い女は、必ず父が居ない時間を狙って大輝の家の前に来ては「真実の愛」と言う言葉を大声で何度も繰り返した。  その姿は、近所の人たちの派手な見世物になっていた。  母は、気丈にふるまっていた。逆に大輝とエリカの前で詫びていた。 「ごめんね。私がお父さんと別れないから、あなた達を嫌な目に合わせて・・・」  何年たっても忘れられないあの日。 大輝が、部活で帰りが遅くなったその夜。  
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