A-4、15年前 横浜

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 まりなは、図書館で主に昔の週刊誌を読んで事件の全貌を知った。大輝と思われる少年Aは罪に問われなかった。正当防衛だ。相手の女は今も生きている。完全看護をされて、のうのうと生きている。国が生かしている。  まりなは大輝の父に会いに行こうと思った。スマホで見ると弁護士事務所は未だあるらしい。事務所に電話したら田中弁護士本人が出た。 依頼ではなく15年前の事件の話が聞きたい。自分は大輝の知人だと言うと、田中弁護士は快く応じてくれた。  渋谷駅から離れた古いビルの中に事務所はあった。  大輝の父、田中弁護士は60代に見えた。髪は真っ白だった。 まりなは、ざっくりと自分と大輝の関係を話した。 「彼は色で人間性が分かると言うんです。私は色がイノセントじゃないって・・・こんなの人を馬鹿にするにも程があります」  田中弁護士は、穏やかな表情でまりなを見返した。 「私の実家には古くから言い伝えがありましてね。神の力を持つものが生まれるんだそうです。あなたは、あの事件の事を知っているんですよね。私の妻と娘を殺した女に天罰を下したのは大輝です。迷いなく竹刀を使い一撃であの女を仕留めました。 あの子は穢れを嫌います。神の血筋の者です。私には、もう会ってもくれません。私は死ぬまでの罰が下りました。妻と娘を死なせたのは私ですから」  まりなが失礼するとき、田中弁護士は言った。 「あなたは、神様を信じますか?見ていますよ」
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