B-1、10年後

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 毎日毎日、何処でも吐き気が抑えられず吐いていた。そのお陰でメンヘラだとか言われて、変な女が寄って来なくなった。  28歳の時、社食でよく見かける女の人から「付き合って」と言われた。こんなに直球で言ってきた人はいなかった。彼女の色は良くも悪くもなかった。彼女の名前は泉田まりな。2つ年下だった。  人が放つ「色」は変化する。その心根と呼応するように。良くも悪くもなる。泉田まりなを見た時、「この人の色は何色が本性なのだろう」と興味がわいた。そしてラインを交換した。 そして直ぐに気が付いた。僕は「色」以外の彼女に何の興味も持っていなかった。  鬱陶しいラインメッセージが一日に何回も来る。3回に2回は既読スルーにした。誘われるままに休日に会うようになると彼女は「冷たい」と言って頬を膨らませる。かわいいふりをした媚態だということが分かってしまう。吐き気がしてきた。大した時間もかからず、彼女は僕の事を「大輝」と名前で呼ぶようになった。勝手に無断で。  僕は彼女の手も握らなかった。でも、デートは断らなかった。会いたくなくても。  僕は父と同じ間違いを犯した。興味で人と関りを持ってしまった。間違っても「会う以上のこと」はしなかった。
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