B-1、10年後

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 まりなの「色」は変わっていった。僕を絡め捕ろうとしていた。 「私は大輝のなんなの⁈」と泣き喚いた。理由を付けて僕のアパートに上がり込もうとした。 「これから私たちどうなるの?」と言われた時にはゾッとした。  父に相談した。間違いの末に全てを失った父。この問題の相談相手にこれ以上の人間はいない。 父はアドバイスをくれた。 「相手から別れを引き出せ。間違ってもお前から言うな」と父に言われた。  殆ど我慢大会の日々の中で、はると再会した。はるは学生の様だった。彼女を取り巻く明るい鮮やかな色。楽しそうな色に目を奪われた。 野暮ったいはるのことを、まりなは気にもしていないようだった。  まりなの頭の中は僕を切り捨てる算段で頭がいっぱいだったから。早くしてくれと思った。やっと見つけることが出来たイノセントな女性の側に僕は行きたかった。  はるも下っ端の研究員で忙しかった。だらだらラインも出来ない。それでも、毎日連絡を取っていた。心の片隅では、まりなとは、きっちり決着を付けなければ、まりなとの付き合いを止めなければと思いながら、チャンスが掴めないでいた。 向こう側から、まりながやって来た。僕は驚いた。色が醜く粘り気を帯びているように汚れている。久しぶりに吐き気がした。まりなが「もう、会わない」と言った時に僕は心の底から「助かった」と思った。  それでやっと、はると正式にお付き合いができることになった。 はるは、6つ下で自分の仕事に夢中だった。好奇心の塊で自分の仕事を楽しんで探求していた。  この辺りで僕は理解した。自分の軸を持って自分や自分の仕事を愛せる人の「色」は色鮮やかだ。自分の実力を冷静に判断できる。数は少ないけれど、そういう人はいる。  あまりにも、この世界は汚れていて「自分が、自分が」という人間ばかりだ。 そいつらは声が大きいから、この世は地獄になっている。  僕は2年付き合って、漸くはるとの結婚に辿り着いた。
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