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こうやって二人でいても黙って本を読んでいる大輝が癪に触って、まりなは読書の邪魔をする。
「これからどうするの?私、もう28だよ」
本から顔を上げた大輝が、まりなの方を見る。
「どうするって何が?」大輝は不思議そうな顔をした。
男の30と女の30は違うのだ。大輝には未だ「結婚」というワードすら浮かんでいないんだろう。
まりなは、自分がこんな扱いを受けていることに不満を感じていた。
控えめに言っても自分は上の部類に入る。容姿も学歴も。大輝よりは下だけれど、他にもお誘いが無いわけではなかった。
私の大学の同級生も結婚した子、結婚が決まった子、もうとっくにママになっている子が増えてるよ。
女にはリミットがあるんだよ。そんなことも大輝は分かっていない。
私は綺麗なのに、どうして私より地味子たちが先に結婚していくんだろう。その子たちの相手も大したことないから気にならないけど……
大輝は、何故こんな付き合いを私としているんだろう。年頃の女をその気もないのに拘束するなんて・・・いっそのこと別れようか。でも、大輝より良い条件の男が私の人生にこれから現れるんだろうか。付き合えたことすら、奇跡なのに。
まりなは、入社した時から大輝に憧れていた。彼は、社内の人間から『変わり者』と称されていた。明らかに他人と距離を取る。仕事の時は愛想がいいのに、それ以外の時は寡黙で怖い顔をして孤立していた。
そんな彼の姿も、まりなには美しく見えた。まりなが彼を見ることが出来るのは、昼休みの社食だけだった。
大輝は一人で食事をとり、後は午後の始業時間までスマホを見ていた。
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