B-2、泉田課長

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 田中はる。 アレは、かなりムカつく存在だ。大人しそうな顔をして今やテレビに出ている有名人。SNSを駆使した活動で信じられない金を稼ぐらしい。 妊娠して、これからは「ママ」も売り物にして更に稼ぐんだろう。  大きな会社と言われても私の住む世界は狭くて小さい。 あの女に大輝を盗まれてから、あの女を見たくないのに、ネットニュースでも名前が出てくる。 自分を売り込むのが上手くて、運のいい奴。ただそれだけなのに社会の扱いが違う。  今のまりなの苛立ちは、大輝の事は入っていない。本物の成功した女、田中はるに対しての歯ぎしりしたくなるような嫉妬心から来るものだった。  横取りされたものは、全部取り戻して丸裸にしてやる・・・  社食に居る大輝にまりなは近づいた。昔の事は誰も知らない。 大輝は相変わらず一人で「自分の席」に座ってスマホを弄っていた。少し歳を取ったが、やはり居るだけで目立つイケメンだ。 「田中さん。奥さんおめでたですって?やっと、お父さんね。おめでとうございます」 まりなは、にこにこした。 大輝は、まりなの顔をみて普通に言葉を返した。 「ありがとう」 「私なんか、自分の子は絶望的だわ……つまんないこと言っちゃった。奥さんを大切にね」 社交辞令を置いて去っていくまりなの後姿を見て、大輝は、まりなの更に変わった「色」を見て吐き気より不安になった。  
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