B-3、はる

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B-3、はる

 はるは、産休に入りSNSの活動も含めて仕事から一旦離れた。 「子供が1歳になるまではお母さんを優先するの」と大輝に笑って宣言していた。 はるのお腹を見ると大輝には、色が付いていない光が見える。はるとは別の命がはるの中に存在している。はる自身は、本当に幸せそうな「色のハーモニー」に包まれている。  お腹の子は女の子だと分かっている。予定日まで後5週間。    毎日、大輝が会社から帰って来るとお腹の大きなはるが出迎えてくれる。二人とお腹の中の一人で揃って夕食を食べる。  それが、どんなに尊い幸せか大輝には分かっていた。 大輝は、17歳まで、そういう暮らしをしていたのだ 。自分は子供で、それが当たり前だと思っていた。父のふざけた行いの果てに、母も妹も殺されてしまった。  子供は女の子。妹のエリカは14歳までしか人生が無かった。はるのお腹を見るとエリカの生まれ変わりかも知れないと大輝は思ったりする。あれで命というものが終わりなら、あまりにも救いが無い。  最後の日の朝も普通の朝だった。 父は黙って朝食のテーブルで新聞を読んでいた。母は、父を無視しながらも父の袖に着いたケチャップを見ると急いで着替えを用意していた。  エリカは嫌いなブロッコリーを僕の皿にそっと移していた。そんな妹が子供っぽくて僕は黙って山盛りになってしまったブロッコリーを母に見つからないうちに急いで食べた。  
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