B-3、はる

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 確かに、あの時間は存在して母もエリカも生きていたのに、次に会った時は血まみれのモノになっていた。二人とも。 僕が、思い出に翻弄されて黙り込んでしまったので、はるが声をかけて来た。 「どうしたの?食欲ないの?」 「・・・なんでもない。はるは料理が上手だから感動していた」 はるは、ニヤッと笑って「も~大ちゃんは煽て上手なんだから」と言った。  はると初めて会ったのは22年前。 僕は20歳の家庭教師で、はるは中学2年だった。はると初めて会った時、14歳から大きくならない妹を思い出した。  はるちゃんは、エリカと違って勉強熱心な子だった。あの頃から「社会学」を極めたいと言っていた。国立大の付属高校への進学を望んでいた。 受験までの1年と数カ月、時には大学生が学ぶ範囲まで踏み込んで勉強をしていた。  子供なのに、甘えたところが無い真っ直ぐな子だった。彼女は、あの頃から「楽しそうな色」を纏っていた。  只の家庭教師と生徒だった。だけど、二人で超難関入試に臨むチームだった。僕はエリカの高校受験の手伝いをしている気もしていた。  はるとエリカは何処かが似ていた。エリカは、道で大手芸能プロのスカウトマンに捕まってしまうほどの美少女だった。はるとは全然タイプが違う。 気が強くて我儘で勉強が嫌いだった。ブロッコリーも大嫌いだった。  この二人の何処が似ているのか、その時の僕には分からなかった。
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