B-4、失踪

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 大輝が仕事から帰ってきたら、部屋の中が真っ暗だった。出産間近のはるは、疲れて早く寝てしまうこともある。でも、そういう時でもリビングの灯は消さない。  大輝は、リビングのスイッチを押して部屋の明かりを灯すと、寝室に向かった。綺麗にベッドメイキングされたベッドだけがあった。その周りに出産の時に持って行く「入院バッグ」もそのまま置いてあった。お風呂場もトイレも確認したが、はるは居ない。はるの実家に大輝は電話を掛けた。はるは実家にも行っていなかった。  出産予定日まで3週間を切っているのに、はるは忽然と消えた。 もちろん、その日のうちに警察にも届けた。最初は家出と決めつけられた。逆に警察官から大輝は「DVでもしてたんじゃないですか?」と言われた。  2週間後、マンションの隣の公園の池から妊婦の腐乱死体が発見された。その時になって、警察はやっと大輝を相手にしてくれた。遺体の損傷が激しくて、何が原因で亡くなったのかも分からなかった。田中はるだと確認されたのはDNA鑑定によってだった。もちろん、お腹の子も死んでいた。 女の子だった。 事故なのか、自殺なのか、事件なのか。それを調べるために警察の捜索が入った。周辺の聞き込みも行われた。  はるは、有名人だったので、あることないこと、悪意や憶測がネットでテレビで飛び交った。大輝は最初から「犯人」にされた。 会社からは、暫く出社しなくてもいいと言われた。
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