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B-5、魔物
大輝は、いつものように社食でスマホを弄っていた。もう、相手をしてくれる妻も居ない。はるは本当に事故死だったのか。全く納得がいっていない。
事件について、殺人の可能性を示唆している記事を選んで読んでいた。はると言う人は本当に有名人だったんだと改めて思う。
大輝が会ったことが無い著名人がお悔やみの言葉をたくさん寄せてくれている。
巨大掲示板には、誹謗、中傷、憶測がたくさん書かれている。大輝犯人説も未だかなり炎上している。
その中に、陰湿極まりないカキコミがあった。
『いい気になってるから恨みを買うんだよ。ざまあ。腹ん中のガキと商売できなくて残念!』この一文だけなら他と似たようなものだ。でも、この書き手はコピペして何処の掲示板も食い荒らしている。どうすれば、見も知らぬ他人の死を此処まで侮辱できるのか。
1000マックスの掲示板の全部をこれで食い尽くしているものまである。
大輝は人の心は本当に悍ましいと感じた。見えないところからなら、見える範囲よりも汚い「色」を吐き出す。
大輝は右手をテーブルの上に置いて震えながら拳を作った。
俯いていたら、声を掛けられた。
「私、あなたが心配なの。私でも出来ることってあるかしら」
泉田まりなだった。
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