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「大丈夫?まだ、お休みしていればいいのに・・・」
まりなは、両手を胸の前で重ねていた。このポーズは良く知っている。
昔、上目遣いで「私の事きらい?」って良く訊いて来たな。こう訊けば「きらい」って言えないのを分かって何時もこの女は同じことをしていた。
「大丈夫だから、出社している」
「顔色が悪いよ」とまりなは言って大輝の頬に手を触れた。
大輝の第3の目が開いた。
まりなの手を払う間のほんの数秒で、はるの死の真相を掴んだ。その瞬間、右手を置いたテーブルにビシッと言う音がして斜めに小さなヒビが入った。
大輝は、まりなの手を払うとにっこり笑った。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫」
「そう、なにかあったら言ってね。家事でも何でも手伝うわ」
如何にも心配そうに言って、まりなは大輝から離れた。
その後姿を見ながら大輝は考えていた。
汚い「色」どころかアイツは、もう人間じゃない。あの時のように、罰を下さなければならない。相手は魔物だ。
17歳の時の手は使えない。竹刀で頭を叩き割ることはできない。
今の俺は成人で、まりなは刃物を振り回さない。
あの魔物は合法的にはるとゆいを殺している。
自分も合法的に罰を下さなけらばならない。
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