B-5、魔物

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 大輝の第3の目は、いつもは閉じている。  大輝は人の「色」を普通の目で見ている。「色」で人間性が見えるのは、子供の頃からだった。生まれた頃は、どうやって認識していたのか分からない。 「人の好き嫌いが激しい赤ん坊だった」と母は言っていた。  最初は色の意味も分からなかった。集団の中に入る年齢になってから、「色」と意味を結び付けられるようになった。  集団の中で起きる他人のトラブル、自分のトラブル、喜び、悲しみ、色々な感情と出来事の経験を積むにつれ、「色」の意味が系統だって理解され、大輝の中で構築された理論となった。 母の色は、とても硬い美しい青い色。エリカの色は甘ったるいピンク色。自分の色は見えなかった。 浮気をしていた時の父の色は、吐き気がするような悍ましい色。母とエリカが死んでからは、父の色は無くなった。 自分にもう一つの目があることに気が付いたのが、あの母とエリカが殺された日だ。 第三の目は時を超える。過去を見せる。そして、恐らく他の「何か」も伴っている。一瞬の判断で持っていた竹刀でブタの頭を一撃で叩き割った。大輝にとって、それはスローモーションのように感じた。 殺すことは目的ではなかった。一番大きな罰を与えることが目的だった。 自分には、その権利と資格があると思った。 資格ではない。使命だ。
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