C、第3の目

1/8
前へ
/47ページ
次へ

C、第3の目

 大輝にとって、他者の過去が見える体験は二度目だった。 一度目は、17歳の時、母と妹を刺殺した女を見た瞬間、目ではない場所から、父と女の情事の始まりと終わりの全てが一瞬で大輝の中に流れ込んできた。  始まりは、女の誘惑。父は興味本位で近づいて行った。一度寝てしまえば、新しい玩具を得た父は半年以上母を裏切っていた。でも、それは本気の遊びだった。母にバレて土下座して謝った。母は、迷っている様だった。  女は本当にバカな女で、父の「愛している」とか「妻とは上手く行っていない」「子供のために別れられない」  女は、そんなテンプレの言葉で、母と僕とエリカを憎んでいた。  父は、母に土下座してからも度々女と関係を持っていた。 だから、あの太った女は、あんなにも自宅だけに攻撃を仕掛けて来たのだ。  弁護士夫人になるつもりで、事務所には攻撃しなかった。 女の過去から見た父は、誠実そうに両方に嘘をつく下衆野郎だった。 僕は、人生の入り口で悍ましく汚い二匹の獣を見た。母と妹をめった刺しにした女の過去を覗き見て、父も女も獣だと思った。相手は獣だから同情の余地はない。 だから、処分した。女の方は物理的に。父の方は心理的に。 「テメェが殺した!お母さんとエリカを殺した!テメェがやったんだ!殺したんだ!」 毎日毎日、オヤジを殴って喚き散らして、エリカと母の形見を投げつけた。 「あんな豚と、そんなにヤリたかったのかよ!」 「何回やった?この変態野郎!」 父の事務所に行って、泣きながら全部喋ってやった。被害者の子供だったから、みんな僕に同情した。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加