C、第3の目

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オヤジが顧問弁護士をしていた会社にも言って同じことをした。 現金、預貯金、債券全部換金して生前贈与してもらった。かなりの金が税金で消えた。オヤジの胸倉掴んで殆ど恐喝だ。 「テメェなんか被害者じゃない!」 母方の祖父母にも全部ぶちまけた。 祖父母は父に母とエリカのお骨も渡さなかった。  祖父母は僕に同居しようと言ってくれた。でも、断った。 「あんな父でも親ですから」と僕は言いながら、徹底的にオヤジをいたぶってやると決めていた。  名誉を奪い、仕事を奪い、男として二度と立ち直れないように尽力した。  被害者ぶって社会復帰なんか絶対にさせるもんかと決意していた。オヤジの携帯やPCから、浮気の証拠を抜いて、女が残した留守番電話の録音も、みんな纏めて浮気相手の弁護士に渡してやった。  その時はもう、意識があるだけで指一本動かせなくなった殺人者になっていた女の弁護士に、親父の言葉が女を狂わせたと言った。女は死刑になって欲しくなかった。  一生垂れ流しの介護をされて長生きしてほしいと思った。 父の正体は、弁護士のくせに「不貞」を犯した下衆野郎だ。僕は被害者になり切って泣きながらマスコミのインタビューを受けた。本当の被害者は僕しかいない。被害者になって加害者の自分の父親を社会的に殺すことしか頭になかった。  人殺しの女の弁護についた弁護士に渡した資料と同じものをネットで拡散した。音声、馬鹿どもが保存していたエロい写真も添付。写真はマスコミが食いついてきた。  僕は冷静だった。血まみれのブタ女の頭を叩き割った直後の現場の写真も撮りまくっていた。父の顔とプロフィールも公開した。 オヤジは僕のやることと言葉に耐えかねて逃げようとした。家を売って半分金をくれたら逃がしてやると交渉した。実際は、僕が全部金を巻き上げた。  また、税金を沢山納めた。  沢山の花を買って母とエリカのお墓に何度も、何十度も花を手向けた。  事務所も立ち行かなくなって、家も無くなって、それでやっと僕はオヤジに興味が全く無くなった。  そうなった頃に僕は大学生になった。
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