C、第3の目

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 あれ以来、まりなへの対処を相談した1回だけオヤジに会った。それ以降、電話すらかけたこともなかった。もちろん会うことも無かった。孤独死して腐り果てた姿になるまで。あんなに汚い男の血が自分に流れているなど認めたくない。今でもだ。 まりなには、僕はイノセントな人を探していたと言った。 本当はちがう。僕がイノセントなんだ。 汚いもの、汚れた心は許せない。  なのに、僕は父と同じ間違いを犯した。この世で最も醜い心の女と関わりあってしまった。はるとゆいを殺したのは僕だ。 あんな女と関わりを持たなければ・・・  まりなが一瞬僕の頬を触った時、僕には最後のはるの姿が見えた。 助けを乞うて、まりなに向かって手を伸ばしていたはる。どんどん沈んでいくはるの身体。 その前の過去も見えた。葦が生える池のふちにはると、まりなが進んでいく。二人で仲良く話していた。足場が悪くて、まりなが軽くはるを押したら、はるは簡単に池に落ちた。 見えたものは、どんどん過去に遡った。 二人が知り合ったのは、3カ月以上前だった。まりなも子供がお腹にいると言い二人で何回も会っていた。 別の日には、まりなは公園の下見もしていた。池のふちの葦の群生。中に入ってしまえば、誰からも見えないのを確認していた。 最後に動機が分かった。 「あの女に大輝を盗まれてから、あの女を見たくないのに、スマホの記事でも名前が出てくる。 自分を売り込むのが上手くて、運のいい奴。ただそれだけなのに社会の扱いが違う。かなりムカつく」 こんな下らないことで、生まれても居ない子供まで殺す。そんな奴は人間じゃない。魔物だ。
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