C、第3の目

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 第三の目を自由自在に開く方法があれば、かなりのことが出来る。 それを使いこなせれば、泉田に復讐できる。あの女は出世欲の塊だ。一番大事なものを徐々に肉を削ぐように削り取ってやる。 「第3の目」が開いた二つの体験を比べてみた。1度目は血まみれのブタを見た時、二度目は、まりなが僕に触れた時だ。 触れなくても、多分「目」は使える。目を使えれば、過去を全部掴むことが出来る。泉田まりなには、色々な噂がある。コンプラにタレコミも沢山入ってきている。 あの二回の体験の共通点は何だ?大輝は暫く考えて分かった。「理不尽なことに対する強い怒り」と「嫌悪感」だ。 この二つの感情を自分の中から意思で引き出すことができれば、恐らく「第三の目」は開く。 全くの他人を使って確かめてみようと思った。  会社の専務、猪瀬は上から目線を信条にしているような男だ。偉そうなのがステイタスだと思っている。この猪瀬も泉田との不倫の噂がある。リーク元は秘書だ。コンプラは口が堅い。決定的な証拠が出ないと動かない組織だ。  大輝は猪瀬専務が出社する10時半が近くなると会社の正面玄関に向かった。途中でコーヒーを買って猪瀬がロビーに入ってきたところを狙った。  大輝は下を向いて何か考え事をしているふりをして、猪瀬の背中にぶつかって思い切り背広にコーヒーを溢した。  「す、すみません。少し考え事をして居まして」と大輝はオドオドと猪瀬専務に謝った。 「お前は人に詫びる時、立ったままでいいと思っているのか!」 この馬鹿は、部下の土下座が大好きだ。 「仰っていることの意味が分かりません。申し訳ありませんでした」と大輝は更に謝った。  側に居た秘書が耳打ちをする。この秘書が日常的に大輝に専務情報をリークしている。 「ふん!女房、子供が死んだぐらいがなんだ!男がぬるいことを言ってんじゃないよ!」 この言葉は、結構怒りの沸点を下げてくれた。ついでに専務は大輝の足元をけると背広を脱いで大輝に叩きつけた。「洗濯しとけ!」  専務がエレベーターに乗り込むと秘書は大輝の方を向いて目配せをした。
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