C、第3の目

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 大輝は、土日は街に出た。絡まれている女の子がいれば、タチの悪い男との間に入って守ってやった。その手の男は若くても、若くなくても、粗暴ですぐ手を出してくる。思う存分自分を殴らせてやった。 「理不尽な暴力」は街に溢れている。  チームで万引きしているガキどもを捕まえて説教した。逆に袋にされることが多かった。その身に謂れのない暴力を受けることで大輝は学んでいたのだ。自分は一切無抵抗に徹した。 殴る蹴るの暴力を受けながら自分は反撃をすることが無かった。痛みの中で血まみれのエリカと母、助けを乞うていたはるの手を思い浮かべた。 消えることのない「怒り」が大輝の中に徐々に根付いていった。  そんなことを何か月続けていただろう。相変わらず、謂れなき暴力を受けていたその瞬間、額が熱くなるのを感じた。全てがスローモーションに見えた。今まで自分を袋にしていた4、5人が手も触れていないのに吹っ飛んだ。そのうちの2人が車道に放り投げられた。車に撥ねられた。  一方的な暴力を与えられる理不尽な怒り、目が開くその感情の沸点を低い所で使うことを大輝は習得した。    思っていた通りだった。 「第3の目」を開くには怒りと理不尽が必要不可欠だった。 まえは、理性がコントロールできないほどの怒りが必要だった。 今は、普通の怒りがあればイケる。  泉田の時、冷静に対応できたのは、大輝が泉田の「救いの無さ」を知っていたからだ。  昔、泉田と別れられてホッとした。   でも、あの女は変わらないと分かっていた。
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