C、第3の目

6/8
前へ
/47ページ
次へ
 大輝は、初めに軽いジャブから繰り出そうと思った。 3週間後の12月1日。総務部でトップの交代が恐らくある。部長の元吉は、社内不倫を理由に降格される。後釜は、猪瀬専務の推薦のモノだとしか聞いていない。  大輝の協力者でもある、猪瀬専務の秘書である社長のスパイは、後釜は泉田だろうと言っていた。コンプラにも不倫の件は上がってきている。主に総務部の情報、口コミだけだ。土台が弱い。  大輝は早急にプロの調査を依頼した。自腹だ。  一週間後、資料が揃ったところで人事のトップ小神野執行役員に元吉部長、猪瀬専務、泉田課長の調査結果を渡した。小神野は秘密裏に執行役員たちを集め、会合を開いた。  能力的にも、人間性でも劣る猪瀬専務を追い落とすチャンスを小神野は狙っていた。  12月1日。  泉田まりなの降格と部署異動が発表された。異動先は社員みんなが「懲役房」と呼ぶ資料編集室。  猪瀬元専務は、その前に子会社に追い出されていた。  小神野は専務になった。 専務派はトップから一掃された。大輝の協力者は、社長の第一秘書になった。 組織とは面白いところだ。盤石なものなど一つもない。力を持つボス猿に媚びるものは、最後はボスと一緒にドミノ倒しだ。  大輝の功績は、勝ち組みんなが分かっている。コンプラは陰の立役者だ。倫理観に厚い大輝を此処に営業から引っ張ってきた現社長は、倫理観の塊のような人格者だった。  まりなは、利口なつもりかも知れないがバカだ。 今度はまた僕の所へやって来る。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加