C、第3の目

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 まりなは、その日を境に社内で孤立してしまった。資料編集室の同僚は、元々碌に口も利けないような人間ばかりだ。  昼休み、一人でスマホを弄っている大輝に声をかけた。 「隣でご飯食べてもいい?」 「席は自由なんだから、いいんじゃない?」  まりなが、食事をしていると時々、大輝の方から話しかけてくる。 「どう?新しい職場?」 「毎日毎日、同じことをしているわ。同僚もクセの強い人ばかりで嫌なになる」 「まぁ、真面目に仕事しなよ。後が無いよ」 「そうだよね」 大輝は雑談しながらも、まりな色の変化で考えを読んでいた。時々、目を開いて過去を探った。  相当に凹んでいるのは分かった。でも、この女には罪悪感というものが欠落している。はるとゆいのことは記憶から消え始めている。  逆に声をかける自分に、懲りずにまた変な感情を抱いている。狂ってる。此処まで自分しか見えてない人間を初めて見た。僕の奥さんと子供にあんなことをしておいて、僕に近づいて来るだけでも驚きなのに、自分の都合のいいお花畑が未だ消えない。  やっぱりコイツは、人間じゃない。  次のステップに進もう。
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