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はるは、まりなを見て慌てて頭を下げた。
「デート中だったんですね。失礼しました!」
はるが、小走りに近い早歩きになって去っていこうとした。その背中に大輝は言った。「ちょっと待って!」
大輝は急いでボールペンで紙ナプキンに何かを書くと、はるの方に行って渡した。
戻ってきて椅子に座った大輝にまりなは「何を渡したの?」と詰問した。
「ラインのIDだよ。あの子は僕が大学生の時の生徒だ。家庭教師をやっていた。真面目な子で研究者になると言っていた。少し話が聞きたかったからね」
「おもしろくないわ。彼女の前で他の女に普通ライン教える?私は大輝の何なの?」
「今、付き合っている人」
大輝の表情は、何を彼女が怒っているのかも全く理解していないようだった。
まりなは、この2年間、大輝だけしか見ていなかったのは大きな時間の浪費だったんじゃないかと考えるようになった。
考えてみれば、大輝はまりなに「好き」とさえ言っていない。
二人で色んなところに出掛けた。行きたいとまりなが言えば、何処にでも一緒に行ってくれた。日帰りで。
そして、「楽しかったね」と言い合う。ただ、それだけ。でも、まりなしか彼女がいないのも確かだった。
まりなは不安だった。若さだけが削られていく。
こんな付き合いで、このまま自分は30になってしまうのではないか。
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