E、イノセント

1/4
前へ
/47ページ
次へ

E、イノセント

 まりなは、病院に搬送され、検査を受けた。そして医師から宣告された。 「頸椎損傷。全身にまひが残ります。残念ですが、今の医学ではどうしようもありません」  警察にも色々事情を訊かれた。 「落石に当たった」としか言えなかった。余分な事を言えば、前の事を掘り返される。 現場検証でも、自然に起きた落石だと断定された。  まりなは、会社を辞めて東京の市町村部にある施設に移った。大輝に人間じゃないと言われた。自分の何処が人間じゃないのか分からない。 ただ、幸せになりたかっただけなのに・・・私をこんな身体にしたアイツを一生許さないと思った。  まりなは正に「魔物」だった。自分のしたことは都合よく書き換え忘れる。 幸せになる権利は自分だけが持っていると考えていた。 助けを求めたはるの表情も覚えていない。お腹に子がいたことなど考えにもない。突き飛ばしたのも、足を滑らせたに置き換えられていた。  大輝は、富士登山の前日に退社していた。マンションもとっくに売り払って今は何処にいるのかわからない。分かったところで、賠償金も請求できない。全部が大輝の計画で、まりなは嵌められたと直ぐに気が付いた。  死んでしまった妻子の事で逆恨みをされて、自分の人生を奪われたとしか、まりなは思っていなかった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加