E、イノセント

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 朝、目が覚めたら大輝は凄く幸せな気持ちがした。 はるは、相変わらずで、ゆいは、やっぱりエリカに似ていた。「お役目が終わったら」っていうのは死んだらってことなんだろうと勝手に大輝は解釈した。 ここで、下働きをして、後30年か40年。そしたら、家族ときっとまた会える。心が本当に久しぶりに穏やかになっていた。  神主が、僕の側に来て昨日までの他人行儀は何処へ?と言った口調で話しかけて来た。 「お前さ、どうやら本物だわ。ちょっと頑張って働いてもらう。これから大学へ行って階位を取れ。」 「え~私を幾つだと思ってるんですか?44になるんですよ。今更大学なんて」 「大丈夫だ。オッサンには見えない」と神主は言うと鏡の前に大輝を連れて行った。 鏡の中の大輝は、はるに出会った頃の姿に戻っていた。 「お前のそのイノセントな気を必要としている所はたくさんある。前に言っただろう?余分なものを持ってる奴には『お役目』があるって」と言って神主はドヤ顔をした。 若返ってしまった自分の姿を見て大輝は、口をぱくぱくさせていた。 すると神主は、その様子を見て言った。 「あ?単なる若見えってヤツだよ。普通に定めが来たら死ぬから。体力は、無いから。それに中身は心もオッサンだよ。大学って言ったって体育会系じゃないから安心しな」  こうして、大輝は強制的に次の春から、都区内の「国皇院大学」の神道文化学部の学生になった。学費は全部、総本家で持ってくれた。  二度と戻ることは無いと思っていた都会に大輝は戻ることになった。  
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