A-2、現実を見る

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 まりなは、1年大久保と付き合って結婚することになった。結婚式の日取りも決まった。ぎりぎり20代で式を迎えられることになった。  ただ、大久保は女癖が悪かった。最初の1年に2回。相手はキャバ嬢だったので許した。  待ち焦がれていた結婚式の直前に新入社員を孕ませた。  大久保の親が、そっちと結婚させる、子供を産ませるといって破談になった。 仕事は続けるつもりで辞めなくて、まりなは助かった。  でも「捨てられ女」と陰で言われている。  大輝は相変わらず、孤立していて淡々と仕事をしている。まりなには絶対に話しかけてこない。社内の人間は破談の理由を全員知っている。まりなは悪くないと口では言う。でも、裏では「大久保に引っかかった安い女」と言われているのも知っている。  分かっている。大久保みたいな男と結婚しても幸せにはなれない。  だから、しなくて良かった。自分に言い聞かせた。  食堂でまた、大輝がスマホを弄っている。この人は、最初から他人と群れない。仕事は一緒にするけれど、それ以外は殆ど一人だ。  まりなは、大輝に声をかけた。 「何をしているの?」 「ラインで彼女と話してる」  大輝が画面を見つめたまま返事をした。 まりなは震える声で大輝に尋ねた。 「彼女がいるの?」 「いるよ。やっと見つけたんだ」 そして、大輝は画面から顔を上げた。その顔は無表情だった。
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