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A-3、特殊能力
「僕ね、見えてしまうんだ。人間の本性が。色で見える。身体の周りを取り巻いている霧のような色だよ。女癖が悪いのとか、人間を条件でしか見ないのとか、色々分かってしまう」
まりなは、大輝の頭がおかしくなっていると思った。
「何を言っているの?大丈夫?」
大輝は、まりなに笑みを向けた。
「君は他人と自分を比べて上に居たい人だ。愚かなだけで普通の人。悪い人じゃない。だから、付き合ってと言うのには応じたんだ。人間は変わるのか知りたかった。君は変わった。悪く変わった。僕はイノセントな女性を探していた。見つけたんだ」
大輝は食堂の椅子から立ち上がった。
「君の方から別れてくれてありがとう。僕から切り出していたら大変だっただろう」
そう言い捨てると田中大輝は、足早に食堂から出て行った。
まりなは、大輝が言った「見えてしまう」が気になった。
気になって気になってしかたがなくて、抑えが利かなくなった。
大輝の住所は知っていた。だから、土曜日にアパートを訪ねて行った。
部屋の中から、おかっぱ頭をした黒ぶちメガネの若い女が出て来た。
「だいちゃん。お客さんみたいだよ」と部屋の中に向かって言った。
まりなは思った。
私は一度も部屋に上げてくれなかったのに、この女は何故部屋の中から大輝を呼ぶの?
こんなブスが大輝の彼女なの?このブスが私より上なの?
大輝が出てきて「どうして此処に来るんだ」と怒りも隠さずに、まりなに言ってきた。
まりなは聞きたくて仕方ないことを口にした。
「見えるって言ったじゃない?あれは、どういうことなの?」
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