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恋人(1)
コスモスの花が風で揺れる。リュークと付き合ってから季節が少し進んだ。
「ミー、ほら」
赤い瞳は、熱くて甘い。見た目は怖いのに、態度が甘々なんて本当にずるいと思う。わたしは、リュークをどんどん好きになっていく。
目の前に差し出された焼き栗。香ばしい匂いに鼻をひくひくさせて、口をあける。もぐもぐ食べていると、ごつごつした手に茶色の髪やちょっと丸い耳を撫でられる。美味しいし、気持ちいい。目をとじて、どっちも味わう。
「かわいい。ほんと、かわいいな」
リュークの親指の腹がわたしのくちびるをなぞる。目をあけると、愛おしそうに見つめているリュークと目があった。
「ついてたぞ」
大きな口で笑うリュークが格好いい。いつもは鋭い瞳が、わたしにやわらかく細められるのを見ると、胸がぎゅっとして、鳴いてしまう。
「きゅう」
「ミーの声、かわいい」
「うう、恥ずかしいよ」
きゅうは、好きの声。リュークと一緒にいて、好きがあふれると勝手に喉が震えてしまう。リス獣人の本能なんだけど、やっぱり恥ずかしい。尻尾をたぐり寄せて、顔をうずめた。
「はあ、ミー、それ、かわいいだけだからな」
よしよし、と宥めるように撫でられる。
「きゅう、きゅう」
「ん、俺もすげー好き。ミーの顔見たい」
きゅうう、と鳴いて顔を上げた。
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