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冬眠(2)
ぽかぽかする。
あたたかで、ぬくぬくな春の気配。
花の匂い、ごはんの匂い、それに、リュークの匂い。
「んっ…………?」
リュークの匂いがして、まだ眠たいまぶたを持ち上げる。
「リューク……?」
「ミー!」
泣きそうな顔のリュークが目の前にあった。
「リューク、おはよう……?」
起きあがろうとしても身体に力がうまく入らない。リュークが支えてくれて、起き上がる。
「ミー、雪降るくらい寒いのに、薄着で寝んなよ! 冬眠はじめてたぞ……っ」
「ええっ、わたし、冬眠してたの……?」
「俺が来たら、ミーがすげー寝てて、死んだみたいに寝てて、溺れた時と似てるから、マジやべえって思って……」
お医者さんを呼びに行ったこと、部屋の温度を春と同じにしたこと、アイスケーキを買ってから三日が経っていたことをリュークから聞いた。そして、リュークがほとんど寝ないでそばに居てくれたことを目の下の黒いクマで知った。
「ミーが目覚めてよかった……」
くしゃりと笑ったリュークに優しく抱きしめられる。わたしより高い体温とあまい匂いに包まれた。
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