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求愛(1)
「ミー、悪い。俺の故郷に行くか悩んでるの知ってて、ミーに甘えてた──俺にとって大切なのはミーだから!ミーが居たらそれだけでいいから! ミーの大事なもんが全部あるこの国で結婚して、俺もミーの大事なもんになりたい。ミー、結婚しよう?」
腕に力が篭ったのが苦しくて、厚い胸板を叩く。リュークの言葉は嬉しいけど、夢を簡単に諦めてほしくない。
「わたしは、リュークが好き。だから、もう、リュークが隣にいないなんて考えられない! リュークの故郷に行けるって勇気を持ちたくて、薄着で過ごしてたの。ちょっと失敗しちゃったけど、寒くてもいっぱい動いていたら寒くなかったし、氷の国でも寝るときは、あたたかくしたら冬眠しないと思う──だから、氷の国でリュークのお嫁さんになりたい。だめかな?」
一気に話してリュークを窺うと、頭をガシガシかいて、わたしをまっすぐに見た。
「だめに決まってんだろ!」
「えっ……」
びっくりして固まっていると、リュークがニンマリ笑った。
「俺の故郷は、氷の国じゃねえし」
「えっ!?」
「氷の国は、エンペラーペンギン獣人とアデリーペンギン獣人しかいねえよ。寒いじゃん」
「え? えっ?! リュークの故郷じゃないの?」
「ああ、俺はイワトビペンギン獣人だからな、故郷は南の国だぞ」
「ええ────っ?!」
驚きと羞恥が全身を駆けめぐり、熱くなった顔を尻尾にうずめた。
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