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求愛(2)
「ったく、可愛すぎるだろ。ミー、寒いと冬眠すんのに、俺のために頑張って氷の国に行こうと思ってたとか、ほんと、かわいい」
「うう、恥ずかしいから言わないで……」
「好きな子が俺のために頑張ってくれて、喜ばない男なんていないからな。ほんと、マジかわいい。なあミー、頼むから顔見せて」
甘い声色に誘われて、尻尾からちょっぴり顔を覗かせる。リュークの両手が尻尾と顔の間に差し込まれ、ぐいっと上を向かされた。
「ミー、俺の故郷は、一年中あったかい」
「うん」
「ミーの好きな栗も向日葵の種も採れるし、俺の好きな魚も旨い」
「うん」
「あとな、一番大事なこと言ってなかったから、今、言うな」
「う、うん……?」
わたしのこげ茶色の瞳を、赤い瞳にじっと見つめられる。心臓がどきどき早鐘を打ち、ごくん、と喉が鳴った。
「俺の故郷は、ミーの好きなナッツも、ミーの見たことないナッツもたっくさん採れる」
「っ!! ほんと?」
ククッとリュークが笑う。
「ああ、ほんと。ミーはナッツに目が無いからな、ここぞって時に言おうと思ってた」
「カシューナッツもアーモンドもある?」
「ピスタチオもピーカンナッツもマカダミアナッツもある」
わたしを見つめるリュークの瞳がやわらかく細められていく。わたしの好きな表情を見たら、胸があまく震えた。
「きゅう」
「ミー、ナッツ好きすぎんだろ」
「うう、この声は、ナッツにじゃないよ……リュークにだもん」
吹き出すリュークにほお袋を膨らませる。リス獣人だから、ぷくうと頬は大きく膨らんだ。愛おしそうに頬袋をなでるリュークに胸がきゅんと締め付けられる。
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