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出会い(1)
春らしい水色の空に、やわらかな雲が流れている。橋を渡り、恩人のリュークさんが働く鍛冶屋にたどり着いた。
「こんにちは。リュークさんはいらっしゃいますか?」
「リュークに用事? ああ、リュークが助けたリス獣人って君のことかな」
「はい、今日はお礼に来ました」
「もうすぐ戻るから、商品見ながら待ってて」
リュークさんが作ったものを見せてもらう。高そうな剣や刀もあるけど、お洒落な生活雑貨も沢山置いてあった。淡い桜色のタンブラーに惹かれて手に取る。光の当たり方で色が変化するのが楽しくて、くるくるまわす。
こんな素敵なものを作るリュークさんに会うと思うと、胸がそわそわする。
「なあ、タンブラー、回しすぎ」
「っ、す、すみません!」
低い声に、慌てて棚に戻した。振り向くと、逆立てた青髪に金色のメッシュ、赤くて鋭い目つきの男性が腕組みをして睨んでいる。怖くて尻尾がぼわっと膨らみ、立ちすくむ。
「リュークおかえり。リスちゃん、リュークは見た目は少し怖いけど、いい奴だから」
いつの間にか隣に来ていたトナカイ獣人は、わたしの背中を遠慮なく押した。
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