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出会い(2)
心の準備ができていなくて、リュークさんの前に勢いよくつんのめる。
「おい、大丈夫か?」
心配する声に顔をあげる。リュークさんは、わたしに手を差し伸べてくれていた。
ああ、溺れたときに助けてくれたのは、腕を掴んでくれたのは、リュークさんのこの手だったと実感する。
見た目は怖いけど、優しい人だとわかったら頬が緩んでいく。
「リュークさん、この前は溺れていたのを助けてくださって、本当にありがとうございました! お見舞いのお花、すごく嬉しかったです。キッシュを焼いたので、よかったら食べてください」
感謝の気持ちを込めて、キッシュをぎっしり詰めたバスケットを渡した。
「これ、作ったの?」
「はい! わたしはミーナと言います。街にあるパン屋でキッシュを作っています」
「……ミーナちゃんって言うんだな。元気になってよかった──俺、キッシュすげー好きだから嬉しい」
「本当ですか? 新作も作ったので、みなさんで食べてください」
バスケットをのぞき込むリュークさんに、キッシュの説明をした。
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