乱暴家族と召使い

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自分は心をより強くさせようとしている。 考えても考えても。期待されて、ママにも、パパにも、ミナにも、マイにも。パパ方の親戚にも。がっかりさせるのが嫌だから。 心がズキズキしていて苦しい。自分で胸ぐらを掴んで息を整えようとするが、流れる涙のせいで過呼吸になる。深呼吸をする。呼吸が整う。 涙を拭って手を洗う。鏡に映る自分を眺める。目の部分が少し赤い。顔を洗ってハンカチで拭いて教室に戻ると、友達に聞かれた。 「ヒカリちゃん、大丈夫?」 「うん、大丈夫。ごめんね、いきなりどっか行っちゃって」 「ううん!気にしないで!」 「ありがとう」 この時わかった。友達の優しさに包まれている今、家のこととかで怯えなくてもいいってこと。私は学校では『本当の私』で過ごしていいんだって。 でも...よくよく考えたら、本当の私は弱いのかもしれない。みんなに迷惑をかけているのかもしれない。一瞬できた天国は一瞬にして地獄に変わった。 私の考え方が甘かったことを自覚する。 涙を流して周りを心配させる。まさに『迷惑』なんだと思ってる。 じゃあ、みんなに迷惑がかからないように、何ができるんだろう。 自分に何度も問いかけて、たどり着いたのが『我慢』。ひたすら自分が我慢すれば、みんなは笑顔でいられる。 こんな考えが私の人生を少しずつ狂わせる原因だとは思いもしなかった。 これからが本当の地獄なんだって、気づいてしまった。 嫌なことがあったときには、泣いたりせず、無理に怒らず、怒鳴らず。 ひたすら人を許して、自分が『嫌』だという気持ちを圧し殺していく。 いつも笑顔でみんなを許す。いつも笑顔で我慢する。 いつしか自分を失ってしまった私は、語彙力も少しずつ失っていって、うまく質問の返答とかができなくなっていく。そうして、皆に責められるようになって、信頼されなくなって、自分を支えてくれる人が数えられる十人以下の人数に減っていってしまった。 私はね、本当はこんな風になりたくて生きていたわけじゃないんだよ? 心のなかで皆に向かって叫ぶけど、誰も気づいてくれない。声に出して言っているわけじゃないんだから、それは『アタリマエ』のこと。 このアタリマエを五年間も続けている。
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