《 新しい家族 》

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《 新しい家族 》

「パパ、ママはどこに行くの?」 「ママは今から病院に行くんだよ」 「病院?」 「そうよ、ママは今から病院に行くの。ヒカリはお姉ちゃんになるのよ」 「お姉ちゃん?私がお姉ちゃんになるの?」 「うん、そうだ」 「やったー!私、優しいお姉ちゃんになる!」 「偉い偉い」 この時ママは妊娠していた。まだ幼かった私はママのお腹がなんで日々大きくなってるのかがわからなかった。 『お姉ちゃんになる』それを聞いて私に妹ができることがわかった。私はわかったときとても嬉しかった。優しくて、妹と色々なお遊びをして遊んで仲良くするって決めた。 ママが病院に入院している。会えないのは寂しいから私は毎日パパと一緒に病院に行ってママと会っていた。 ママが入院してちょっと経った。私はパパに連れられて待合室で待っていた。暇で暇で仕方がなかった私はお絵かき帳で妹が入ってる新しい絵を描いた。すると部屋の奥の方から泣き声が聞こえた。オギャーオギャーって。 私は待合室を出てママがいる部屋の前に立った。パパも着いてきた。手を繋いだ。 「そろそろ新しい妹と会えるよ」 「楽しみ!お名前はなににしたの?」 「名前はミナだよ」 するとママがいる部屋の扉が開いて大きなカゴみたいなものが出てきた。身長がまだ小さかった私は中に何が入っているのかがわからなかった。ジャンプしても中が見えない。パパは私を抱っこして中を見せてくれた。その中にはとても小さい命が寝ていた。 「ミナ?」 「うん、そうだよ」 「わあ!ミナ、はじめまして!お姉ちゃんのヒカリだよ!...なんでお返事しないの?」 「寝ているからだよ、小さいなぁ。可愛いなぁ」 「ミナもヒカリもママも可愛いもん!」 「ああ、そうだな。これからは家族四人で生活するんだ。ヒカリ、ミナと仲良くするんだぞ」 「うん!」 こんな会話してたなぁ。この時私は幸せな空気に優しく包まれていたんだ。 ミナと会って時間が経った。看護師さんらしき人がママに会って良いって言ってたから私はママのところに向かった。 ママのいる部屋に入るとママとミナがいた。 「ママ!私お姉ちゃんだよ!」 「うん、そうだね、」 「パパ、ママ元気なさそう。大丈夫なの?」 「ヒカリ、ママは今疲れてるだけだよ。ゆっくりさせてあげなさい」 「うん!ママ大好きだよ!」 「ママもヒカリのこと大好きよ」 この時はまだパパとママに愛されていた。ママが退院してからパパとママはミナのことで大忙し。私と遊んでくれる時間なんてほとんどなかった。ミナに嫉妬していた。でもたまに私が寝る前にパパとママが絵本を読んでくれる時があったから我慢できた。 ミナはもう一歳で話せるようになった。私はミナと遊びたくて自分が持ってるおもちゃを沢山持ってきてごっこ遊びをしたりした。でもミナは何すれば良いのかわからなそうだった。それでも私はミナに怒ったりせずに色々教えてあげた。 「ヒカリとミナ仲が良いわね」 「ああ、そうだな」 パパ、ママ。今はそんなこと言えないよ。それはもう過去のこと。 ミナは優しくて笑顔が可愛くて穏やかな妹。だった。 ミナが四歳になったとき、彼女はなにかに取り憑かれたかのように変わってしまった。それも私の前だけで。パパとママの前では前みたいに『優しい、笑顔が可愛い、穏やか』を見せている。 今まで使ったことのない言葉がミナの口から聞こえた。死ねとかブスとか。 大好きな妹にそれを言われて私は立ち直れなくて一人で落ち込んでいた。パパは忙しくて話を聞く時間なんてない。 私は一人ぼっちなのかなって思ってた。 ママはわかってくれる。娘になんらかの細かい異変でもすぐに気づく。母親って全員そうなのかな? 小学二年生のときもう一人の妹ができたマイって名前をつけられた。マイ。私はマイが可愛くて可愛くてずっとマイのそばにいた。パパとママが家にいないとき、ミナは一人でテレビを見て何もしない。マイは泣いてばっかり。私はマイを抱っこして横になって、マイは私のお腹の上で寝っ転がって。気づいたら私とマイが一緒に寝ているときがあった。 「ヒカリ、マイの面倒を見てて偉いわね。ありがとう」 「うん!私お姉ちゃんだもん!」 「偉いよ」 お姉ちゃんだもん。そんな考えで私はいつも自分が欲しいものとかを後回しにしていて生活していた。パパとママはわがまま言って良いんだよって言う。 でもなんでかな。わがままなんて言えない。 わがままを言ったら『お姉ちゃんだから我慢しなさい』って言われると思った。それって私だけ? マイが三歳のとき、私は十一歳。 マイはまだ言葉を話せてない。 オムツも取れてない。 自分でご飯も食べれてない。 診断してもらった。マイは知的障害を患わってるって。先生からは、言葉もほんの少しずつだけど覚えてきているって。だから、マイの障害は軽い方だって。私はマイが心配だった。パパもママも。ミナも。 そんな時、パパが東京に引っ越すぞって言ってきた。 大好きだった小学校も卒業できずに転校。 みんなとのお別れ、故郷とのお別れが辛かった。 これからの東京での生活が不安でいっぱいだった。
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