《 180°の回転 》

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《 180°の回転 》

小学四年生。東京に引っ越した。地元の公立小学校に通うことになった私は公立学校がどんな感じなのかがわからなかった。なぜなら今までの小学校は私立の学校だったから。 四年一組。担任の先生と教室へ向かった。ドキドキが止まらない。元々ハーフである私は皆と仲良くできるのかな?教室練に入ると皆が私を見る。誰かが私を見てクスクス笑っている。そんなのわかる。だって皆の視線が私に集まってるんだから。 朝学活のちょっと前、教室に入って席に座る。皆私を凝視してコソコソ話してる。 やっぱりハーフの人なんていてほしくないよね。 正直、できるだけ早く教室から逃げ出したかった。皆の視線が痛すぎて涙が溢れ出そうだった。もう逃げ出したい。そう思っていた時、ちょっと声が高くて、声質がフワフワしているクラスメイトであろう女の子に話しかけられた。 「はじめまして!友達になろう!」                     りおん この言葉で私は救われた気がした。この子、莉音が私を救った。莉音の席は私の席とは離れていた。私は左右両方とも男子に囲まれていた。周りの女子からは羨ましがってる声が聞こえた。 「いいなぁ、イケメンに囲まれてて」 「なんであの子がイケメンの横に座るの」 わかってる。わかってるよ。私だって『イケメン』に囲まれる席に座りたいと思ってないよ。先生が勝手に決めたんだよ。私に文句言わないでよ。 ある程度学校に慣れてきた私は話しやすい大人しくて元気な子と話すことが増えていった。元気すぎる子、一軍陽キャみたいな子と話そうとすると変なふうに嫌なふうに見てくる。嫌われてしまいそう。いや、もう嫌われているのかもしれない。関わらないようにしよう。そう思ってた。 小学四年生の三学期。ごみ処理施設と川のダムの社会科見学に行った。皆にとっては遠足みたいなものだった。みんなお弁当を持ってきている。パパやママが作ってくれたお弁当を。私もママが作ってくれたお弁当を持ってきた。でも一つだけ課題があった。 「ねえ、一緒に弁当食べて良い?」 「え、あーごめん無理」 「ねえ、一緒に弁当食べて良い?」 「えー、嫌だ」 「ね、ねえ、一緒に弁当食べて良い?」 「無理」 皆私を拒否する。仲間に入れてほしいと言った人たちに他の人が弁当を一緒に食べて良いか聞いていた。 『私に無理って言ってたから無理だから諦めなよ。』心のなかでそう呟いた。 「え、」 二人目は快く歓迎されていた。なんで私だけ駄目なの?同じクラスメイトでたまに話すじゃん。私の中では混乱のモヤモヤしかなかった。 「ヒカリちゃん、一緒に食べなーい?一人っしょ?」 「え、うん」 「さっき一人だったの見えてたからさ。さっ、お弁当食べよん!」 私を誘ってきたのは同じクラスの中心的キャラ。彼女は私を誘ってきてくれた。それは嬉しかった。でも、私は皆の話の流れに追いつけなさすぎてやがて仲間はずれにされた。一人で黙々とご飯を食べている私は味覚がわからないくらいボーッとしていた。 『大好きなママが作ってくれたお弁当なのに、私の好きなおかずが入ってるお弁当なのに。味がしない。美味しくない』 ママのお弁当が美味しくないと感じたのはこれが人生で初めてだった。残したかったけど、ママには申し訳が立たないから全部食べた。 「ちょっと、お手洗い行ってくるね」 「え?あ、はいはい」 雑な返事に少し心が傷ついたけど、深呼吸をして落ち着いた。 お手洗いで用を済ませて皆のところへ戻ろうとする。このときも周りの人からの目線が私に集まった。なんでいちいち見てくるんだろう。不安で不安で仕方がなかった。 早く皆のところへ戻ろう。そして話そう。 そう思ってた。 「でさ、あいつが、外国人と日本人のハーフとかって日本人じゃないじゃん。英語ペラペラだし日本人の会話わからないんじゃね?って言ってたの」 「まじで?でも確かにハーフだってことに調子のってるよね」 「え、てか皆誰のこと話してる?小声で!せーの」 「「「ヒカリ」」」 「あ、待っている」 「あ、で!ママがね、あんたこれ片付けなさいって。自分ですればいいのにダルくない?」 皆は私の陰口を言っていた。やっぱり私は皆と仲良くなれないんだなって思った。 皆私を見て不安そうにしてる。聞こえていたのかがわからないからだろう。 私は聞こえていたけど聞こえなかったフリをした。 「Cちゃんのママがどうしたの?」 明るく接したから聞いていなかったと認識した皆は安心している表情を浮かべた。 同じことが川のダム見学で起こった。 “ Have Courage And Be Kind ” (勇気を持って優しくしなさい) シンデレラの映画に出てくる台詞。私がいつも大事にしている台詞。座右の銘みたいに大切な台詞。嫌なことがあったらこの台詞を思い出して乗り越えてる。いつまで耐えられるかがわからないけど。 小学五年生になった。一学期のほとんどは新型コロナウイルスのせいで休校になった。そのせいでスタートダッシュに失敗した。 私はパパに言われて私立中学に受験することになった。正直受験をするつもりなんてなかった。したくなかった。 「パパ、友達と遊びに行って良い?」 「何言ってるんだ、受験するんだから勉強しなさい」 「いや、受験しろって言ったのパパでしょ?」 「いいから勉強しろ!」 受験を押し付けられて、外出することなんてできなかった。上京する前も。私立だから電車で遠くまで行かないといけない。そのため、夕方の五時から六時の間に返ってくることが多い。だから外出できない。 公立の学校に転校っていつもより早く帰れるんでしょ? 『今年で卒業まで二年。せめて小学生の二年ぐらいは自由になりたい』 自分の願い、欲に負けていつも私は家をこっそり出て遊びに行くことが多かった。 駄目ってことはわかってるのに、自由になりたかった。 ただ...それだけだった。 友達と公園で逃走中をして遊んでいた。本当はマンションでするらしい。でも近所迷惑になるから公園でしている。友達がいなかったはずの私は気づいたら本当の自分を忘れてキャラを作っていたのだ。 幸せだった過去はまるで嘘みたいだ。 『未来が栄えていて太陽のように明るい子になるように』 ヒカリとして名付けられたのはありのままの自分を失わないようになのに。 数年前までは幸せで笑ってたのに。 私の人生は上京してからすべてが変わった。
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