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乱暴家族と召使い
ママが家を出て行ってから、私は『長女なんだから』と色々させられるようになった。
親権を持っているパパは障害を負っているマイの面倒を見ないといけない。それなのに、いつもパソコンやスマホに集中している。
マイの面倒を見るのは別に平気だ。だけど、家事までほったらかしにするのはおかしい。我慢して自分から積極的に行っていたものの、いつの間にか全部私の仕事になった。
『あれ取ってきて』が『取ってこいよ』って。『やって』が『やれよ』って。
いつも我慢して笑顔でしてほしいことをしてた。嫌なことでもため息はつかないで、笑顔で、『いいよ』って言って、家族の縁を保ってきた。
でも、ある日。聞こえた、聞こえてしまった。聞いちゃダメだったあの音。
プツンッ
雑な扱いで強く引っ張られていた自分のメンタルの紐を、自分はそれを強く握りしめてて、切れてしまうのを避けるようにしていた。でも、ずっと嫌なことの繰り返しで強くて太い紐は、次第に弱くて細い、一本の糸に変わった。我慢が限界を越えた時だった。メンタルを象徴する糸が切れてしまった。
その時は一体なにが起きたのかがわからなくて、放っておいた。だけど、学校に行った日。
「ヒカリちゃん、どうして泣いてるの?」
この一言で気付いた。冷たくて寂しい一粒の涙が私の頬を辿っていた。右手で頬を触ると、濡れている感覚があった。自分は泣いている。そう気づいた瞬間、私は教室を出て、トイレに真っ先に向かった。
誰もいなくて静かで、個室にいるから狭い空間にいて。いつもは圧迫感を感じて嫌がってた個室は、今不思議と安心感が湧いてくる。
ふぅ、と一息吐いてボーっとした。頭の中に雑に扱われる自分が言われた言葉が流れた。そのたびに心がズキズキと痛む。
気づいてなかっただけで、いや、気づこうとしないで現実逃避を続けていただけで。知らないうちに自分の心は何回も折れていた。
一度折れた心は、また折れないようにより強く、頑丈に心をリセットさせる。だけど、心がレベルアップするたびに、自分が思う『嫌なこと』もレベルアップする。時には心より弱いときもあるけど、心より強いときも。
より強く、より頑丈にした心は、折れるといつもより苦しくなる。心にできた傷がより深くなり、リセットするのに時間がかかる。こんなに苦しい思いをするって知っているのに、なんでだろうか。
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