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ルール説明
「では今から新入生歓迎会、鬼ごっこのルール説明に入ります」
ステージの上。
針金で固定してんの、って具合に背筋を伸ばして、鈴が鳴るような凛とした声で説明を始めたのは日坂にゾッコンという副会長、出雲直。
ちゃんと仕事をしている所を見るにやはり根は真面目らしい。
そんな彼が学園を乱してるとは到底思えないけど…。
そう思えば突然、副会長さんがある一点を見つめ、今まで見た事のないような和やかな笑みを浮かべるものだから俺は思わず瞠目する。
きっと、というか絶対に相手は日坂だ。
俺と同様それを目撃した大半の生徒は副会長の美しさにうっとりとするか、あるいは笑顔を向けられた日坂に対して殺意を抱いているようだった。
ここからじゃ日坂の容姿が見えないのが残念だけど。
色々な声が飛び交う中、恋は盲目と言うべきか特に気にした様子もない副会長は一拍置いたあと鬼ごっこのルール説明を開始した。
内容を簡単に纏めると一般的な鬼ごっこのルールと変わりなく、人がゲーム終了まで鬼から逃げ切るというもの。
制限時間は2時間。
意外と短く感じるかもしれないが、両者とも走りっぱなしであることを考えればかなりキツイ。
そして生徒らが1番の盛り上がりを見せたのは、景品の紹介に入った時だった。
まず最後まで捕まらずに逃げ残った人へ与えられる景品。
それは生徒会役員の誰かを指名し、許容範囲内のことなら何でも叶えてくれるというもの。
例えばハグして欲しいとか、デートして欲しいとか。
基本はそういったものが多いが、たまに部費を上げて欲しいといった願いもあったりする。
次に鬼に与えられる捕まえた相手と一日過ごせる券。
これがさっき地獄を見た、と言った景品である。
というのも去年人側だった俺は、この学園の風潮をまだ理解出来ておらず食費タダを生徒会にお願いしようと参加していた。
しかしそのせいで、ふいに現れた変人に捕まってしまい、のちに最悪な一日を過ごして今でも付き纏われる始末。
また同じ過ちを繰り返さないよう鬼になったら誰も捕まえないと決心していたが、少しでも触れてしまえば、触れてきたのが人であってもペアが成立することを色の言葉で思い出した。
だから知り合いと先に裏を合わせペアを組むべきだったんだけど、今のところそれができる人がいないみたいで俺は目頭を抑える。
「…隆やっぱ俺に捕まえられてくんない?」
「なんで無理」
「親友の頼みじゃん!」
「親友になった覚えねぇつの」
「えっ」
予期しなかったダメージに胸を抑えていると、説明を
終えた副会長が礼をしてステージの端へと戻っていく。
それと入れ替わるように姿を現したのは諸注意の説明を任された風紀委員長、久遠篤志。
真顔なはずなのに、威厳を感じさせる表情はどことなく生徒会長と似ているが、そんなことを言った暁には確実に首を跳ねられる。
隆と同様、委員長にも嫌われている会長なので。
けれど隆と違うところがあって、それは委員長だけでなく会長も嫌っているということ。
同学年だからというのもあるかもしれないが、以前説明したように風紀が生徒会と敵対する役目を持っているからだろう。
詳しい理由はよく分からないけど、周りからも犬猿の仲と言われているのでそれぞれの前で名前を出すのはタブーとされている。
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