呼び出し

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「じゃあ今から30分間の休憩に入るよぉ!その間にトイレとか作戦会議とか済ませといてねー!トイレはゲーム開始後に封鎖されるから!」 風紀委員長の諸注意や書記の閉会の言葉を終え、再びマイクパスされた会計は大きく手を振りながら会場全体を見回し声を上げる。 それを耳に一応トイレでも行っておこうかなと考えていれば、ふいにポケット内のスマホが震えるので手に取ってメッセージアプリを開く。 「げっ」 「どうしたの?」 「や、ちょっと用事思い出して」 「今?」 「うん、今」 今、と言いつつ今じゃないといけないのかと不満いっぱいな顔で色に答える。 それに色も違和感を感じたようで首を傾げたが、深入りはせずに「そっか」と無理やり自身を納得させるよう頷いた。 そして、もしかしたら用事が終わり戻ったあと色と話す時間はないかもしれないと思った俺は弟の肩を掴んで口を開く。 「あとで言う時間ないかもだから先に言っとくけど、もしゲーム中なんかあったら絶対連絡して」 「うん?」 「誰か捕まえたときも連絡」 「分かった」 「怪我だけはしないように」 「兄さんもね」 そこまで言って、相槌を打つ色の大きくなった背中をポンポンと数回軽く叩いた。 兵役に行く息子を見送る親はこんな気持ちなのかな。 「隆も大丈夫だとは思うけど──…っていない」 念の為、と隣に居た隆にも目を向ければ、彼は既に姿を消していて辺りを見渡す。 けれど見つける事は出来ず、もう保健室に行ったのかと息を吐く。 「じゃあ俺行くから。気をつけてね」 見送る色に手を振りながら、もう一度送られてきたメールの内容を確認して俺は体育館の外へと出た。 ・・・・・ 場所は体育館横の倉庫。 一般的なものと違って埃が一切ない室内は、1クラス分程度の広さがあり、奥に歩き進めると1人の生徒がマットの上に腰を下ろしていた。 「…生徒会長の癖に抜け出してきて良かったんですか」 「俺の部下は優秀だからな」 「上司がこれだと下が成長するしかないですもんね」 「親の背を見て育ってんだよ」 「なるほど反面教師」 「喧嘩なら買うぞ」 「図星だからって怒らないで」 ここまでがまあ出会い頭の一連の流れ。 互いに何の感情もない発言なので、両者とも真顔である。 それくらい長い付き合いってのもあるけど。 傍から見れば異質な空気感のなか、会長が隣の空いたスペースを叩くので、意図を汲み取り跳び箱の上に跨った。 「ふっ、反抗的なとこも可愛いな」 「頼むからやめてくれ」 「俺の顔が良すぎて近寄れないのか?」 「お宅の手癖が悪すぎて近寄りたくないんです」 「ウブなんだな」 「拒絶反応かな」 全てポジティブに捉えるその特技他のとこで役立てろよ、と頭を抑えつつ、いい加減本題に入るため話を切り出す。 「で、材料費はどうやって返したらいいんですか?」 「そりゃ身体で」 「肥えてらっしゃる会長様が俺のような平凡な身体で満足出来るとは到底思いませんが」 「やってみないと分かんねぇだろ」 「じゃあやります?」 「あ?」 「冗談。それで本当は?」 「お前の冗談タチ悪いな」 「会長の方こそ」 「口だけは達者で。材料費の件はもういい」 「え、じゃあなんで呼んだんですか」 「話しておきたいことがあった」 急に表情の変わった会長に、真剣な話だと気付いた俺は空気を読んで姿勢を正す。 会長のことは別に敬っていないが、こういう時までおちゃらけたりは絶対にしないと決めていたので。 「日坂太陽についてだ」
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