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生徒会長
暫くしてチン、と音を立てて開かれたエレベーターに視線を移した俺は、目に入った人物に思わず眉を顰めた。
「ゲッ」
「あ…?……よう平凡」
「最悪だ」
「本人前にして言うか普通」
「平凡な俺が言ってるんで普通っすね」
「平凡理論強えー」
そう言って嫌な笑みを浮かべながら肩を組んできたのは、さっき話に出てきた生徒会のトップ。抱かれたいランキングもトップ。
生徒会会長の皇絢斗である。
オレ、コノヒトキライ。
口を開けば貶してくるし、この人と絡むと親衛隊の目が俺を殺す勢いでぶっ刺さしてくる。
何度制裁を受けたことか…。
それを知ってて尚、素知らぬ顔で近寄ってくる性格の悪さ。
顔の良さに比例コースで性格の矯正をして頂きたい。
ここで、親衛隊について説明しておこう。
親衛隊というのは言わばファンクラブのようなもので、公式的に親衛対象を崇拝することを許され、抜け駆け厳禁の集団首絞めをしている人達のこと。
抜け駆け厳禁なのに入るのは、定期的に行われるお茶会で親衛対象を間近で見、話すことが出来るからだそう。
親衛対象は顔が良いから普段は話すことすら許されないらしく、付き合えないと分かっていても話せる機会を設けてくれる親衛隊に入りたい人が多いのだとか。
そこで問題視されているのが制裁。
例えば抜け駆けして親衛対象と付き合っている隊員、あるいは一般人。
また勝手に親衛対象に気に入られている隊員、あるいは一般人。
後者に関してはまさしく俺。
気に入られている、というより遊ばれているのだが、そっちの方が悪意あると個人的に1票。
とまあ、そういった人達が居るのですが、それに嫉妬して暴走した親衛隊が彼らに罰を与える、というのが制裁である。
抜け駆けした人に制裁するのは別にいいんだよ?
抜け駆けした人がルール破ったんだから。
でもさでもさ。
俺みたいに無害な奴がただ一方的に絡まれてるのを見て制裁するのは違くね??
俺が美形ではなく平凡だからってのもあるらしいけど。美形って何でも免除されてていいよね。
はぁ…ここまで来ると虚しくなってきた。
さっきから何故か俺のSiriを揉んでいる会長の御手を叩き落とせばガキのようにケラケラと笑って写真を撮りだす。
ほんと何歳児ですかアンタ。
「はーい写真代払えー」
「逆に尻揉んで写真撮ってやった分の金払え」
「頼んでないんですか?糞が」
「おい語尾。俺先輩な」
「敬ってないのに敬語って必要ですか?今まで少しの偽善で敬語つけてたけどもう外して良さそう」
「それは少しの偽善も無くなったと?」
「勘のいいガキは嫌いだよ」
「にしても柔さも形も平凡な」
「何の話すか」
「ケツ」
「お巡りさーん!!コイツです!!!」
ガバッ、と手を挙げ会長を指差しながら声を上げたが悲しかな。
周りには人っ子1人いやしない。
まあ分かってて叫んだけど。
てか生徒会のフロア5階なのになんで3階にいんの。
「ハッ、もしかしてにゃんにゃんしに来たんですか?」
「お前とな」
「そんな約束知らないししたくない。じゃあ」
「ちょ待てよ」
「キム〇ク!?」
腕を掴んで至極真面目な顔で声を発した彼を見上げれば、端正な顔を存分に活かした笑みを浮かべるものだから思わず「うぇ」と口を抑える。
危ない戻すところだった。
「俺の顔見て吐くの、お前くらいだな」
「まだ吐いてない大丈夫」
「吐く前兆だろうが」
「というか多分みんな心の中で嘔吐いてますよ」
「最悪だな」
「最悪です」
だからあっちいってにゃんにゃんしてきてください、と目で訴えれば彼はどう受けとったのか掴んだままの手を引き、再びエレベーターへと乗り込む。
「何階」と聞かれたので「1階」といえば、ボタンを押されそのまま2人で下っていく。
「ねぇ暇なんですか?生徒会って暇なの?」
「忙しいわ阿呆」
「じゃあ仕事してください。にゃんにゃんでもいいので俺と関わらないで」
「何故?」
「ブーメラン。俺が何故」
暫く睨み合い(俺だけ)をしていれば、落下したのでは?と錯覚を起こすくらいの速さで1階に到着し会長にバイバイ。手を振る。
だがそれも虚しく、俺の数歩後ろを着いてくる会長にイライラとムカムカが募りながらフロアへと足を進めた。
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