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「本当にいいのですか、助太刀は」できれば自分も柳太郎の無念を晴らしたい、と笹木は言う。
しかし桜太郎は、
「お気持ちだけはありがたく……これは私のすべきこと。見つけていただいただけで十分です」
そう言うと、戸に手をかけ、おもむろに開いた。
「ごめんください」
言いながら桜太郎は玄関へ進む。
「吾郷道成のお宅でよろしいか?」
抑えた声で言う。まだ昼過ぎであるが、家の中は日が当たらず薄暗い。
暗がりから人が歩み出る。
桜太郎は左手を刀の鍔に添えた。
笹木はまだ家の外にいる。
桜太郎は前方を見据える。
痩せ細り、やつれた男がそこにはいた。
「あなたが、吾郷道成か」
桜太郎が問うと、男は小さく頷いた。
「私は高山桜太郎。あなたが殺した、高山柳太郎の息子です」
吾郷は震えた。
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