仇の名は

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 吾郷は刀を取り落として、その場にへたり込んでしまった。緊張が抜けたようだ。  桜太郎は、吾郷に背を向けて、戸を開く。  笹木はずっと様子を伺っていたようだ。眉根を寄せて、こちらを見ている。 「斬らなかったのですか……?」  桜太郎は首を振る。 「なぜ……?」 「さあ……」    桜太郎は後ろ手に戸を閉めて「父なら斬らなかったと思うからですかね」と言った。
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